Realized GARCHを解説:リターンと実現ボラティリティ指標を同時にモデル化する
Realized GARCHがリターンの動きと日中のボラティリティ指標をどう組み合わせるか、方程式と分散更新例、前提条件と限界を解説します
このガイドの内容GARCHに実現指標を加える理由
短い要約
Realized GARCHは、リターンと実現ボラティリティ指標の両方を使って条件付き分散をモデル化します。測定方程式は、観測された指標が潜在分散やリターン・ショックとどう結び付くかを表し、単純なGARCH-Xの更新式よりも完結した体系を作ります。
GARCHに実現指標を加える理由
ARCHとGARCHは、リターン系列から分散の変化を推定します。EngleがARCHを提案し、Bollerslevがその一般化形を発展させました(Engle, 1982、Bollerslev, 198690063-1))。1つのリターンは、その期間の値動きの大きさを示すノイズのあるシグナルです。終値間リターンが小さくても取引時間中が静かだったとは限らず、大きなリターンだけでは値動きの経路も分かりません。日中価格から計算した実現分散などの別の指標を使えば、セッション内の値動きについてより多くの情報を得られる場合があります。
Realized GARCHは、その指標を分散の動学に組み込みます。基本仕様では、前期の条件付き分散と実現指標の両方が、当期の条件付き分散の更新に使われます。さらに、実現指標自体を表す方程式も設けます。この追加方程式が重要です。指標を説明のない外部入力として扱うのではなく、潜在分散やリターン・ショックとの関係をモデル化します。
原論文は、ダウ・ジョーンズ銘柄と1つの上場投資信託のサンプルにおいて、日次リターンのみを使うGARCHより実証的な適合度が高かったと報告しています。これは特定のサンプルでの結果であり、あらゆる資産や期間で予測が改善する保証ではありません。リターンのみを使う基本モデルについては、GARCHガイドを参照してください。
リターン、潜在分散、実現指標を区別する
条件付き平均を差し引いた後の期間 \(t\) のリターンを \(r_t\) とします。モデルが条件付き平均を含む場合を想定しています。\(h_t = \operatorname{Var}(r_t \mid \mathcal{F}_{t-1})\) は期間の開始時点で分かる条件付き分散、\(x_t\) は期間 \(t\) の途中または終了時に観測される正の実現指標です。たとえば \(x_t\) は日中リターンの二乗和で、\(h_t\) と同じリターン二乗の単位にできます。
時間の順序が重要です。\(h_t\) の予測には期間 \(t\) の開始前に入手できる情報を使います。\(r_t\) と \(x_t\) を観測した後、次期の分散予測 \(h_{t+1}\) を更新します。期間 \(t\) が始まる前から \(h_t\) を予測していたと主張するために \(x_t\) を使ってはいけません。
Realized GARCHは、リターンと測定されたボラティリティ・プロキシの動学を同時に扱うモデルです。異なる頻度のデータを構造化されたラグ重みで結ぶMIDAS回帰とは異なります。どちらも日中情報を使うことがありますが、比較する前に方程式、予測対象、情報の利用時点を確認してください。
3つの対数線形方程式を読む
一般的なRealized GARCH\(1,1\)は、リターン方程式、分散方程式、測定方程式で構成されます。
rₜ = √hₜ zₜ log hₜ = ω + β log hₜ₋₁ + γ log xₜ₋₁ log xₜ = ξ + φ log hₜ + τ(zₜ) + uₜ
ここで \(z_t\) は標準化リターン・イノベーション、\(u_t\) は測定誤差であり、\(\tau(z_t)\) は観測指標がリターン・ショックに依存することを許します。最初の方程式は分散1のショックに条件付き標準偏差を掛けます。2つ目は前期の対数分散と対数実現指標で現在の対数分散を更新します。3つ目は観測対数指標を、現在の潜在対数分散、リターン・ショック、測定イノベーションに結び付けます。
対数形式を使うと、正の \(h_t\) と \(x_t\) を制約のない対数スケールで表せます。分散予測を指数変換すれば正の値になります。そのため、切片 \(\omega\) は対数分散の切片であり、長期分散そのものではありません。基本モデルでは、パラメータは個別の持続性指標として読むのではなく、同時に推定します。
\(t−1\)時点の測定方程式を分散更新式に代入すると、実現指標が対数分散にフィードバックする仕組みが分かります。
log hₜ = (ω + γξ) + (β + γφ) log hₜ₋₁ + γτ(zₜ₋₁) + γuₜ₋₁
この \(1,1\) 仕様では、対数分散の持続性は \(β\) だけでなく \(β + γφ\) で要約されます。測定関係もフィードバックに寄与します。前期の分散が高いほど実現指標も高くなりやすく、その指標が次の更新に入るためです。この代数的な関係は推定係数の解釈に役立ちますが、あらゆるRealized GARCH拡張モデルの定常性を証明するものではありません。推論では、実際に推定した仕様に対応する制約を使う必要があります。
Hansen、Huang、Shekは、この同時モデルの線形形式と対数線形形式を提示し、3方程式の構造を示しています(2012年論文)。具体的なラグ次数、実現指標、条件付き平均、イノベーションの仮定は、推定対象の仕様に従う必要があります。
測定方程式が加える情報
測定方程式は、実現指標が潜在分散とリターン・ショックの両方に連動し得る理由を表します。よく使われるレバレッジ関数は次のとおりです。
τ(zₜ) = τ₁ zₜ + τ₂ (zₜ² − 1)
線形項と中心化した二乗項により、リターン・ショックと実現指標の非対称な関係を表すことができます。その形は係数で決まり、この式だけで負のリターンが将来のボラティリティを引き起こすと証明されるわけではありません。
論文の基本形では、\(z_t\) と \(u_t\) は別々のイノベーションとしてモデル化され、\(z_t\) は標準化され、両者は互いに独立と仮定されます。これは推定しやすい統計仕様であり、すべてのサンプルで市場リターンや測定誤差が特定の分布に従う証拠ではありません。正規性を事実と断定しなくても、推定にガウス型準尤度を使うことがあります。
この方程式はRealized GARCHとGARCH-Xの違いも示します。GARCH-Xは観測指標を分散更新に含めても、その指標自体の動学を指定しない場合があります。Realized GARCHは実現指標もモデル化するため、将来の実現指標がまだ観測されていない複数期先の予測を支えます。これは同時的な統計関係のモデルであり、実現指標を外部の原因に変えるものではありません。
1期先の分散更新例
推定した対数線形モデルの係数が \(ω=-0.7824\)、\(\beta=0.75\)、\(\gamma=0.15\) だとします。期間 \(t\) の終了時点で、現在の条件付き分散が \(h_t=0.0004\)、観測された実現指標が \(x_t=0.0009\) だと仮定します。すべて同じ日次の小数リターン分散スケールで表した、正の仮想値です。
分散方程式を使って期間 \(t+1\) の予測を更新します。
log hₜ₊₁ = −0.7824 + 0.75 log(0.0004) + 0.15 log(0.0009) ≈ −7.7024 hₜ₊₁ = exp(−7.7024) ≈ 0.0004517
含意される条件付き標準偏差は \(\sqrt{0.0004517} \approx 0.02125\)、つまり指定されたリターン期間で約2.13%です。実現指標は推定係数を通じて次期の分散予測に影響します。この計算で係数を再推定するわけではなく、測定方程式を使って \(x_t\) が \(h_t\) に等しいと主張するわけでもありません。
この例は計算方法だけを示します。パラメータの不確実性、推定誤差、アウト・オブ・サンプル観測が含まれないため、統計的有意性やベンチマークに対する優位性は分かりません。 <!-- learn:illustration -->

同時システムを推定し、予測する
推定には、時点を揃えたリターンと実現指標の観測値を使います。尤度または準尤度にはリターン方程式と測定方程式の両方が含まれるため、イノベーションの分布や依存構造の仮定を変えると推定値も変わり得ます。推定方法、イノベーションの仮定、条件付き平均の扱い、実現指標、データのクリーニング規則を明記し、測定モデルなしに分散の再帰式だけを示さないでください。
各期の終了後、新しいリターンと実現指標を使って状態を更新し、次期の分散を予測できます。複数期先を予測するとき、将来の \(x\) は分かりません。完全なRealized GARCH仕様には実現指標の動学が含まれるため、テスト標本の将来実現値を代入するのではなく、その将来分布または期待値を考慮する必要があります。
標本内の適合度とは別に予測を評価する
評価対象は予測と一致している必要があります。たとえば次期の条件付きリターン分散や、同じ期間の実現指標を使います。対象、プロキシ、単位、予測期間、評価日を揃えてください。標本内尤度はモデルの適合度を比較しますが、時系列順の予測テストの代わりにはなりません。
各予測を実際に利用可能になった時点で保存し、その時点までの情報だけで再推定して、あらかじめ選んだベースラインと共通標本上で比べます。結果を見る前に損失関数を選び、必要に応じて依存性を考慮した不確実性推定と、対応のある損失差を報告します。QLIKEと二乗誤差のガイドでは、プロキシの性質と損失の選択が比較に与える影響を説明しています。
実現指標を選び、期間を揃える
モデルの有用性は、使う指標と時間間隔によって変わります。日中価格から計算した実現指標は、\(r_t\) が終値間リターンでも夜間の値動きを含まない場合があります。原論文では、リターン期間より短い実現指標のウィンドウを明示的に認めており、測定方程式は \(x_t\) が \(h_t\) の不偏推定値であることを強制しません。ただし期間が異なっても問題がないわけではありません。\(\phi\) の解釈、予測対象、比較はいずれも期間に依存します。
論文には具体例があります。約 \(6.5\) 時間の取引時間から作った指標を、\(24\) 時間の終値間リターンに対する条件付き分散と組み合わせます。この設定では、日中指標がリターン期間全体の一部しか捉えないため、著者らは \(φ < 1\) と予想します。したがって、推定された \(φ\) は指標、取引セッション、リターンの定義に結び付いており、別の資産やサンプリング設計にそのまま移せる普遍的な補正係数ではありません。
高頻度データには、ビッド・アスク・バウンス、非同期取引、価格刻み、古い気配値、記録ミスが含まれることもあります。2スケール実現ボラティリティのガイドでは、マイクロストラクチャー・ノイズを扱う推定方法を説明しています。HansenとLundeは、市場マイクロストラクチャー・ノイズが実現分散の測定に大きく影響し得ることを示しました(2006年論文)。プロキシを変えると、適合度、予測、レバレッジ推定が変わる場合があります。
対数線形モデルは \(\log x_t\) を使うため、選んだ指標は厳密に正でなければなりません。データにゼロや負値があり得る場合、変換、フィルター、下限処理はモデルを変えるので、根拠を示して開示します。指標にジャンプが含まれるか、対象セッション、欠損バーの処理、リターン分散との単位の一致を確認してください。日中観測を増やせば測定誤差が自動的になくなるわけではありません。
近接するモデルや主張を区別する
通常のGARCHは、過去のリターンや二乗イノベーションと過去の分散を使います。Realized GARCHは実現指標を分散の動学に追加し、潜在分散やリターン・ショックと結び付く方程式でその指標をモデル化します。GARCH-Xは通常、追加した指標を外部入力として扱います。MIDAS回帰は異なる頻度のラグにパラメトリックな重み曲線を使い、GARCH-MIDASは関連するハイブリッドですが、方程式は別途確認する必要があります。これらの名称は同じ意味ではありません。
このモデルが予測するのは、仮定の下で定義された条件付き分散または実現指標です。リターンの方向を予測したり、日中指標が翌日の分散を引き起こすと証明したり、利益の出る戦略を保証したりはしません。標本内尤度が高くても、将来予測が優れるとは限りません。取引の結論には別途定義したシグナルと、スプレッド、手数料、市場インパクト、資金調達費用、リスク上限を含むコスト控除後の評価が必要です。
再現可能な報告では、資産と標本、リターンの定義と条件付き平均、実現指標の構築とセッション範囲、方程式とラグ次数、イノベーションの仮定、推定期間、予測起点と期間、ベンチマーク、損失関数、不確実性の評価方法を示します。妥当な実現指標の選択肢に対する感度を報告し、データの除外や正値化の調整も開示してください。
よくある質問
Q1Realized GARCHは日中データを加えた通常のGARCHですか?
いいえ。分散の動学に実現指標を使い、その指標を表す測定方程式も加えます。GARCH-Xの更新式は観測指標を含んでも、その指標の動学を指定しない場合があります。
Q2実現指標は条件付き分散の不偏推定値でなければなりませんか?
必ずしもそうではありません。原論文の対数線形形式は、終値間リターンに日中価格のような別期間の指標を組み合わせることを認めています。その柔軟性があるからこそ期間と解釈が重要であり、プロキシの品質が無関係になるわけではありません。
Q3実現指標がゼロでも使えますか?
対数線形の測定方程式や分散方程式には、そのままでは使えません。ゼロまたは負の値には根拠のあるデータ規則か別の仕様が必要で、下限や変換を使った場合は報告します。
Q4Realized GARCHの予測が優れていれば、取引戦略で利益が出ますか?
いいえ。指定した対象、標本、評価規則に対する予測性能を示すだけです。収益性を判断するには、別個のシグナル、現実的な執行、取引費用、資金調達、リスク制約が必要です。
出典
問題を報告
この記事のリンクを含むメールを準備します。送信すると Mark に報告が届きます
クイックチェック
記事を読み終えたら、3問で確認しましょう
問題 01
基本的なRealized GARCHの体系がGARCH-Xの分散更新より完結しているのはなぜですか?
答えを選ぶと解説を確認できます