米国債STRIPS入門:ゼロクーポン債の価格と税務
米国債STRIPSによる将来の支払いの分離、割引価格と金利感応度の仕組み、現金を受け取る前に米国の税務上の所得が発生し得る理由を解説します
このガイドの内容クーポン債は将来の支払いごとに分けられる
短い要約
米国債STRIPSは、対象となる米国債のノート、ボンド、TIPSの予定支払いを、個別のゼロクーポン証券に分けたものです。各証券は定められた満期日に一度だけ支払います。利回りがプラスなら市場価格はその支払額を下回り、マイナスなら上回ることがあります。支払額との差が、早期売却時の利益を保証するわけではありません。市場利回り、残存期間、TIPSのインフレ調整、取引費用、米国のOID課税ルールがすべて影響します。
クーポン債は将来の支払いごとに分けられる
STRIPSはSeparate Trading of Registered Interest and Principal of Securities(登録利息・元本証券の分離取引)の略称です。金融機関は、対象となる米国債の元本と利息の支払いを、個別の振替決済証券に分けることができます。6か月ごとにクーポンを払い、満期に元本を返すノートを持つ代わりに、予定された一回の支払いに対する権利だけを保有することもできます。米財務省は公式のSTRIPSページで制度と仕組みを説明しています。
例として、額面1,000ドル、年率4%のクーポンを半年ごとに払う、仮想の10年固定利付米国債ノートを考えます。この債券は6か月ごとに20ドルを20回支払い、満期に元本1,000ドルを返します。すべての支払いを分離すると、クーポンSTRIPSが20本、元本STRIPSが1本の、合計21本の権利になります。それぞれに固有のCUSIPと満期日があります。クーポンSTRIPは指定日にクーポン相当額を一度だけ払い、元本STRIPは満期に額面を一度だけ払います。
一つの証券を買った投資家が、ほかの20回分の支払いを受け取るわけではありません。元本STRIPの保有者は満期に元本1,000ドルを受け取り、個々のクーポンSTRIPの保有者はそれぞれの支払日に20ドルを受け取ります。元のノートの支払い予定は各証券の由来を示しますが、分離後は一つひとつが独立したゼロクーポン証券です。
STRIPと米国短期国債は似ているが別の商品
STRIPも米国短期国債(Treasury bill)も、定期的なクーポンはなく、満期に一度だけ支払います。支払額に対する価格の高低は利回りによって決まり、支払額を下回る場合も上回る場合もあります。短期国債は短期の米国債として直接発行されます。STRIPは、対象となるノート、ボンド、TIPSから分離された一回分の支払いです。受け取り方が似ていても、商品、満期の範囲、発行手続きは異なります。
財務省の制度では、対象となる固定元本のノートとボンド、およびTIPSの元本・利息支払いを分離できます。短期国債と変動利付債(FRN)はSTRIPSの対象ではありません。TIPSの元本STRIPも、後述する固定額1,000ドルの例とは異なります。TIPSの元本はインフレに応じて調整されるため、満期額は固定された名目金額ではありません。表示額だけを見て将来受け取るドル額が固定だと考えず、証券の種類と支払い条件を確認してください。TreasuryDirectの市場性証券用語集も、関連する米国債用語の参照に役立ちます。

割引価格は一回払いの現在価値
途中のキャッシュフローがない固定名目払いについて、基本的な現在価値の関係は次のとおりです。
価格 = 満期支払額 / (1 + 期間あたりの利回り)^(期間数)
仮に、10年後に満期を迎える額面1,000ドルの元本STRIPを検討します。名目年利回りが4%、半年複利なら、半年あたりの利回りは2%、期間数は20です。
1,000ドル / (1 + 0.04/2)^20 = 約672.97ドル。
この価格は、表示された満期支払額より約327.03ドル低くなります。この差額は想定利回りと保有期間から計算した割引であり、途中で払われるクーポンではありません。この名目STRIPを満期まで保有し、財務省が約束どおり支払えば、受取額は1,000ドルです。満期前に売却する場合は、その時点で取引できる市場価格で売るため、購入価格より安くなることも高くなることもあります。
この計算は、固定名目額、利回り4%、半年複利、クーポン日相当のタイミングでの購入を前提とし、経過利息、取引費用、税金を含みません。実際の相場には市場慣行とディーラー価格が使われるため、この算式は関係を示す例であり、取引可能な銘柄の価格を示すものではありません。
表示利回りは、所定の計算慣行のもとで価格と満期支払額の関係を表すものです。口座に毎年4%の現金が入金されるという意味ではありません。満期前に使ったり再投資したりできるクーポンはありません。そのため、STRIPは将来のクーポンをどの利率で再投資できるかという問題をなくす一方、生活費を別の現金で賄うか、保有分の一部を売る必要が生じます。予定した日まで保有しても、インフレ、税金、発行体の支払リスクがなくなるわけではありません。
二つの相場を比べるときは、「10年」のような丸めた表示だけでなく、正確な支払日と受渡日をそろえます。残存期間が9年11か月のSTRIPは、ちょうど10年のものとは利回りも価格も異なることがあります。表示利回りが名目か実効か、半年複利などどの複利前提かを確認してください。一方の価格をある慣行で比較し、もう一方の利回りを別の慣行で計算すると、正しい計算でも食い違って見えることがあります。
小さな利回り変化でもSTRIP価格は大きく動くことがある
長期の元本STRIPは遠い将来の支払いが一回だけで、途中のクーポンがありません。そのため、価値はその将来額をどれだけ割り引くかに大きく左右されます。同じ仮想の10年後の1,000ドルについて、半年複利の名目利回りを4%から5%へ上げると、計算価格は約672.97ドルから610.27ドルに下がり、約9.3%の下落となります。利回りを3%に下げると約742.47ドルとなり、利回り4%時の価格より約10.3%高くなります。
比較として、額面1,000ドル、クーポン率4%の仮想10年債は、利回り4%なら価格が1,000ドルです。利回りが5%になり、クーポンを半年ごとに受け取る場合、理論価格は約922.05ドルで、およそ7.8%の下落です。このノートは10年目より前に20ドルの支払いを受けるため、そのキャッシュフローはSTRIPの一回きりの1,000ドルより短い期間で割り引かれます。この前提では、同じ利回り変化に対するSTRIPの感応度のほうが高くなります。
デュレーションは小幅な利回り変化に対する債券価格の概算感応度を表し、コンベクシティは利回りが動くにつれて感応度がどう変わるかを示します。デュレーションは一次近似であり、価格の保証ではありません。残存10年、名目利回り4%、半年複利の元本STRIPの修正デュレーションは約9.80年です。単純なデュレーション推計では、利回りが1パーセントポイント上がると価格は約9.8%下落します。上記の正確な複利計算では約9.3%の下落となりますが、これは価格曲線の曲がり方が影響するためです。同じ幅の利回り上昇と低下に対し、価格反応は完全には対称になりません。
この比較はリスクの把握に役立ちますが、どのポートフォリオでも投資の優劣を決めるものではありません。満期が近づくにつれSTRIPの金利感応度は変わります。早期売却では、ビッド・アスク・スプレッド、市場流動性、税務上の取得価額、その日に買い手が求める利回りも価格に影響します。FINRAの債券ガイドは金利リスクと流動性リスクを説明し、Investor.govもゼロクーポン債の価格とみなし利息を解説しています。
日付の決まった支払いは既知の負債と照合できる
将来のドル建て支払額が分かっている投資家は、その日に近い支払いが予定された米国債を重視することがあります。例えば、10年後に満期を迎える名目元本STRIPを、その時点で予定する1,000ドルの名目支払いと比較できます。負債の日付、金額、通貨、双方の確実性を照合してください。日付が近ければ不都合なタイミングで資産を売る必要を減らせることがありますが、それだけで計画全体のリスクがなくなるわけではありません。
ミスマッチはいくつも考えられます。インフレで負債額が増える、STRIPの満期より前に支払日が来る、別の通貨で支払う必要がある、といった場合です。TIPS STRIPはインフレ連動の元本であり、固定名目額とは仕組みが異なります。途中で売却すれば、売却価格は利回りや市場環境に左右されます。支払日が負債の日付と合っていても、税金、口座上の制約、予期しない支出を計画に含めていなければ、それらを賄えるとは限りません。
商品を選ぶ前にキャッシュフローを整理します。必要な日付と金額を列挙し、名目ドルとインフレ調整後のドルを分けたうえで、選べる満期と購入コストを比較します。支払日や金額が不確かな場合、一つの満期だけを持つとタイミングのずれが残ることがあります。複数満期のラダーや組み合わせなら支払日を分散できますが、購入、再投資、維持について別の判断が必要です。
分離と再構成は市場仲介機関を通じて行う
STRIPSは金融機関、ブローカー、ディーラーを通じて商業簿記決済システムで保有します。TreasuryDirectによると、投資家はTreasuryDirect口座内で証券を直接分離したり再構成したりできません。制度に参加する機関が分離を行います。再構成では対象となる元の証券を組み立てるのに必要な残りの部分をそろえる必要があり、都合のよいクーポンと元本だけを組み合わせる方法ではありません。
例えば、いくつかのクーポン支払日を過ぎた後に残りのノートを再構成するには、残っているクーポン支払いと元本の証券が必要です。具体的な要件や対応可否は銘柄と金融機関によって異なります。取引前に、正確なCUSIP、満期日、支払額、価格表示の慣行、最低注文額、手数料、表示された市場価格が希望数量でも約定可能かを確認してください。少額の証券に表示された価格でも、大きな注文を同じ水準で売買できるとは限りません。
財務省の市場性証券に関するFAQとSTRIPSの沿革に公式の制度情報があります。現在の取引可否や執行条件は、取引を取り扱う金融機関に確認してください。
米国ではSTRIPの現金支払い前に課税されることがある
米国連邦税では、分離された債券またはクーポンは通常、購入価格で取得した独立した債務証券として扱われます。満期支払額がその購入価格を上回る場合、その差額がオリジナル・イシュー・ディスカウント(OID)です。多くの場合、証券からその年に現金が支払われなくても、保有者はOIDが発生するにつれて課税対象の利息に含める必要があります。その結果、満期前または早期売却の代金を受け取る前に税金の支払いが生じ、キャッシュフローが合わなくなることがあります。
OIDの金額や計上時期を、当初の割引額を年数で均等に割るだけで求められるとは限りません。IRS Publication 550は、分離した債券とクーポンを別々の債務証券として扱うこと、購入者のOID計算が証券と取得方法によって異なることを説明しています。IRS Publication 1212には、OID証券の情報と計算方法が記載されています。購入価格、利回り、取得日、計算期間、過去の申告、分離された証券がインフレ連動かどうかが影響することがあります。IRSの説明では、1984年以降に分離された証券の多くで定率法を使い、インフレ指数連動STRIPSには異なる扱いをします。
TreasuryDirectによると、金融機関はSTRIPSで発生した利息とTIPS元本のインフレ調整をForm 1099で報告します。IRS Publication 550では一般に、米国債利息は連邦所得税の対象となる一方、州・地方所得税は免除されると説明しています。ただし、納税者の実際の申告は口座の種類や個別事情によって異なる場合があります。最新のIRS Publication 550、IRS Publication 1212、該当する口座や管轄地域の税務指針を確認してください。個別の申告については税務専門家に相談してください。この節は一般的な米国の税務の仕組みを説明するもので、特定の投資家向けの税額計算ではありません。
相場を比べる前に確認すること
- 証券がクーポンSTRIP、元本STRIP、TIPS STRIPのどれかを特定します。短い銘柄表示だけで判断しないでください。
- CUSIPと支払日を、想定するキャッシュフローの金額・種類と照合します。
- 利回りの表示慣行、複利の前提、額面100ドル当たりか証券1本当たりかの価格、決済日、最低数量、取引費用を確認します。
- デュレーションで金利リスクを測り、コンベクシティも考慮したうえで、複数の利回りを仮定して実際の売却価格を検討します。
- 名目の資金需要とインフレ調整後の負債を比べ、早期売却が必要になる可能性を確認します。
- 税務上の計上時期と現金の受取時期を投資キャッシュフローと分け、取得条件に応じた最新のIRS情報を使います。
重要なのは、満期日に予定された支払いと今日売る場合の価値を区別することです。STRIPは将来のキャッシュフローの日付を明確にできますが、満期前は市場価格が変動し、税務上の計上が現金支払いより先になることもあります。米国債の新発債が入札でどのように割り当てられるかは、米国債入札結果の読み方を参照してください。米国債のノート・ボンドと先物契約の違いは、米国債先物と現物米国債の違いで説明しています。
よくある質問
Q1米国債STRIPは米国短期国債と同じですか?
いいえ。どちらも満期に一度だけ支払う場合がありますが、短期国債は短期証券として直接発行されます。STRIPは対象となるノート、ボンド、TIPSから分離したクーポンまたは元本の一回分の支払いです。
Q2STRIPは満期前にも利息を支払いますか?
個々のSTRIPから定期的なクーポンの現金支払いはありません。満期日に表示された金額が一度だけ支払われます。ただし、米国連邦税のOIDはそれより前に発生することがあります。
Q3満期前に売るとSTRIPの価値は下がることがありますか?
あります。市場が求める利回りの上昇で売却価格が下がる場合があり、提示される買値、取引流動性、取引費用も影響します。満期支払額が早期売却価格を保証するわけではありません。
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問題 01
仮に10年後満期、額面1,000ドルの元本STRIPがあり、名目利回り4%、半年複利とします。現在価値はいくらですか。
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