米国債のターム・プレミアムとは?
長期米国債利回りから短期金利の予想と長期債保有への推定補償をどう分けるか、モデルごとに推計が異なる理由を解説します。
このガイドの内容米国債のターム・プレミアムは何を測る?
短い要約
米国債のターム・プレミアムは、長期利回りのうち、短期金利の予想平均経路では説明されないと推定される部分です。金利リスクを負うことへの補償を表し、モデルの定義によってはコンベクシティの影響や説明できない残差も含まれます。長期金利の予想もターム・プレミアムも市場の気配値から直接読み取れないため、同じ観測利回りでもモデルによって配分が異なる場合があります。
米国債のターム・プレミアムは何を測る?
10年米国債利回りは、次回の連邦準備制度理事会(FRB)の会合よりはるか先まで続くキャッシュフローを持つ証券の市場利回りです。投資家は、同じ期間について予想する短期金利の平均値と比較できます。その差は一般にターム・プレミアムと呼ばれます。単純化した分解では、長期の名目利回りは、将来の短期金利の予想平均にターム・プレミアムを加えた値におおむね等しくなります。
ターム・プレミアムは、短期金利で何度も再投資する代わりに、より長い満期の金利リスクを保有することに伴う補償を表します。利回りが予想外に変われば、長期債の価格は満期前に大きく動くことがあります。そのリスクを引き受ける投資家の姿勢、将来のインフレや金利をめぐる不確実性、ヘッジとしての債券の価値などが、長期債の価格に影響します。FRBの長期金利に関する説明では、長期債を保有する投資家が追加の補償を求める理由の一つとして金利リスクを挙げています。
この分解は、米国債に政策金利の予想分とプレミアム分という別々に取引できる二つの部分がある、という意味ではありません。観測される利回りは市場価格を金利に換算したものです。将来の短期金利の予想とターム・プレミアムは推定された構成要素であり、モデルはどの利回り、予想、満期、複利の慣行を使うかを正確に定義する必要があります。
「プレミアム」という言葉から、常に正の値だと考える必要もありません。推計値が負になる場合もあります。負の推計は、そのモデルの定義のもとでターム・プレミアム成分がゼロを下回るという意味です。米国債利回り自体がマイナスであること、特定の投資家に損失が保証されること、モデルが負の支払いを直接観測したことを意味しません。
投資家が長い満期に補償を求めるのはなぜ?
長期米国債を保有する投資家は、同じ期間にごく短期の証券を繰り返し買い直す投資家よりも、金利変動による価格感応度が高くなります。インフレ、政策金利、経済見通しが変われば、債券の市場価値も動く可能性があります。保有分をどれほど簡単に売れるか、他の投資家がどの程度のデュレーション・リスクを引き受けるか、いちばん必要な局面で債券が他の資産をヘッジできるかも不確実です。
この不確実性への補償は、財務省がクーポンに上乗せする手数料ではありません。リスクと予想の測り方に応じて変わる、市場利回りに含意された要素です。長期米国債の予測可能なキャッシュフローやヘッジ機能を高く評価すれば、投資家は低い利回りでも受け入れることがあります。デュレーション・リスクを保有する意欲が低下したり不確実性が高まったりすれば、より高い利回りを求めることがあります。予想される政策金利の経路だけでなく、需給や投資家のリスク許容力も関係します。
ターム・プレミアムは、社債の信用スプレッドとは異なります。米国債と社債では、信用リスクや契約上のリスクが大きく異なります。米国債のターム・プレミアム分解は満期ごとの名目金利を扱いますが、社債スプレッドには発行体、債券の優先順位や流動性、予想信用損失も反映されます。ターム・プレミアムの推計値を米国債のデフォルト予想や、米国債に対する社債のスプレッドと同じものとして読まないでください。
ある一日の取引から切り離せる、観測可能な唯一の「真のプレミアム」があるわけでもありません。投資家ごとに運用期間、負債、ヘッジ、制約は異なります。モデルの推計値は市場価格を体系的に解釈したものであり、全保有者への調査でも、独立して提示される市場金利でもありません。
アナリストはどのように推計する?
一つの方法は、動的な期間構造モデルを使います。複数の満期にわたる米国債利回りにモデルを当てはめ、時間の経過に伴う金利の変化を表します。次に将来の短期金利の経路を推計し、債券の期間にわたる平均と当てはめた利回りを比較します。10年ターム・プレミアムの推計値は、当てはめた10年利回りと、同じ期間の予想短期金利の平均との差です。
利回りデータのみを使うモデルもあれば、長期金利の予想を推計するために専門家の予測調査も使うモデルもあります。FRB理事会の3ファクター名目期間構造モデルは、利回りに加え、3カ月物米国債短期証券の金利に関する調査予測を組み込んでいます。理事会は、こうした予想は直接観測できず、調査データは完全な市場予想ではなくノイズを含む代理指標として扱うと説明しています。
ニューヨーク連銀のAdrian-Crump-Moench(ACM)手法も、モデルに基づく分解です。別の確認方法として、予測調査で報告された短期金利経路の平均を長期米国債利回りから差し引く方法があります。説明は簡単ですが、調査が債券価格を決める限界的な投資家を代表しているとは限りません。短期ターム・プレミアムとインフレ水準に関するニューヨーク連銀の分析では、この研究の一面を扱っています。モデルと調査は異なる前提で関連する問いに答えるもので、どちらも加工前の予想の直接観測ではありません。
公表される利回り分解の中には、各部分を足すと観測利回りに戻るよう、モデル残差を一つの成分に含めるものもあります。サンフランシスコ連銀の米国債利回りプレミアム推計は、予想短期金利、ターム・プレミアム、残差からなるモデルを明示しています。図表では表示成分の合計が利回りと一致するよう、残差をプレミアムに割り当てます。別のモデルと図表を比べる前に、情報源の定義を確認してください。
仮定上の分解はどのように合計される?
当てはめた10年米国債利回りが4.25%で、あるモデルが同じ期間の将来短期金利の平均を3.75%と推計したとします。そのモデルの慣行では、推計ターム・プレミアムは0.50パーセントポイント、つまり50ベーシスポイントです。
当てはめた利回り4.25% ≈ 予想短期金利の平均3.75% + 推計ターム・プレミアム0.50%
これは仮定上の説明で、現在の市場推計ではありません。「分解」の意味を示す計算であり、投資家が3.75%の予想と0.50%のプレミアムを別々に購入できるという意味ではありません。
次に、後日の当てはめ利回りが4.65%、予想短期金利の平均が3.90%、推計ターム・プレミアムが0.75%だとします。利回りは40ベーシスポイント上昇しました。モデル上の計算では、そのうち15ベーシスポイントが予想金利成分、25ベーシスポイントがターム・プレミアム成分によるものです。モデルの定義と当てはめ誤差の範囲で、二つの変化を合わせると40ベーシスポイントになります。
各成分が反対方向に動くこともあります。4.25% = 3.75% + 0.50%から、後の分解が4.30% = 3.95% + 0.35%なら、予想短期金利は20ベーシスポイント上昇し、ターム・プレミアムは15ベーシスポイント低下したことになります。二つの成分が一部相殺するため、利回り全体の上昇は5ベーシスポイントにとどまります。
実際の実証的な利回り曲線では、クーポン債、当てはめたゼロクーポン利回り、特定の日付と慣行が使われます。これらの丸めた数値を観測された予測、価格目標、保証されたリターンとして扱わないでください。足し算と引き算を分かりやすくするための例です。

ターム・プレミアムの推計値が異なるのはなぜ?
分解の主な数量は直接観測できません。限られた期間のデータから、長期にわたる短期金利の動きをモデルが推定する必要があります。米国債利回りには持続性があるため、標本期間、因子数、金利が長期水準に戻るという仮定の違いが、推計経路や残差プレミアムを変えることがあります。
FRBの調査ノートは、長期ターム・プレミアム推計の頑健性についてKim-WrightモデルとAdrian-Crump-Moenchモデルを比較しています。標本期間やデータが異なるため、時期によっては結果が大きく異なります。Kim-Wrightの推計は調査予測を取り入れますが、比較対象となった元のACM推計は米国債利回りを使います。調査データを加えると推計の不確実性が小さくなる場合はありますが、調査が市場予想の適切な代理指標でなければ、精度が上がるとは限りません。
定義も重要です。FRBの3ファクターモデルFAQでは、その利回りターム・プレミアムに「純粋な」リスク補償とコンベクシティ・プレミアムの両方が含まれると説明しています。コンベクシティ調整を含めずに定義する研究者もいます。別のモデルでは当てはめ残差を違う成分に割り当てる場合もあります。定義を確認せず水準だけ比べると、実際にはない食い違いが生まれます。変化の比較が有用な場合もありますが、期間、モデル、日付によって結果は変わります。
こうした不確実性は、指標を無視する理由ではありません。モデルに基づく証拠の幅として扱う理由になります。FRBのノートによると、推計の特徴にはモデル間で比較的安定するものもあります。たとえば大まかな歴史的傾向では一致しても、正確な水準、符号、短期変動では異なることがあります。一つの小数を全投資家の期待に関する精密な事実として示すべきではありません。
ターム・プレミアムは何によって上がったり下がったりする?
インフレや将来の金利変化をめぐる不確実性が高まると、デュレーションの長い債券を保有するために一部の投資家が求める補償も増えることがあります。成長、政府の借入、将来のデュレーション供給に関する不確実性も、長期米国債を保有する意欲を変える可能性があります。大口投資家のリスク許容力や意欲が弱まれば、他の買い手がより低い価格を求め、それに対応して利回りが上がることがあります。こうした経路は重なる場合があり、利回り曲線だけでは各要因を個別に示せません。
需要は反対方向に働くこともあります。安定したキャッシュフローや経済的ストレスへのヘッジを求める投資家にとって、長期米国債は価値があるかもしれません。需要が強まれば価格が上がり利回りが下がるため、モデルのターム・プレミアム推計値も低下する可能性があります。ニューヨーク連銀は、歴史的なプレミアム推計が将来利回りをめぐる不確実性や見解の相違とともに動いたことを説明しており、FRBは安全資産需要が長期金利を低下させた要因の一つとなった時期があると述べています。
この関係は条件付きであり、単一変数の公式ではありません。米国債の発行が増えても、プレミアムが機械的に一定額上がるわけではありません。影響は需要、発行の満期、見通し、市場がすでに織り込んでいるリスク量によって変わります。同様にFRBのバランスシートの変化がデュレーションの保有者を変えても、ターム・プレミアムを一対一で推計することはできません。一つの見出しに原因を求めず、利回り、政策見通し、インフレ補償、市場環境とあわせて読みましょう。
ターム・プレミアムが高いとFRBは金利を高く保つ?
それだけでは分かりません。10年利回りは、予想短期金利の経路が上がる、ターム・プレミアムが上がる、または両方が変化することで上昇します。ターム・プレミアム推計はそれらの説明を分ける試みであり、次回会合で連邦公開市場委員会が何を決めるかを示すものではありません。
長期金利が政策金利の変更と逆方向に動くとき、この区別が役立ちます。短期的な利下げは利回り曲線の手前に影響しますが、10年利回りにはその決定を大きく超える期間の予想経路の平均と、長期エクスポージャーへのプレミアムが含まれます。利下げがすでに予想されていた、後の政策が異なると予想された、またはプレミアムが上昇して予想短期金利の低下を相殺した可能性があります。タイミングについてはFRBの利下げ後に長期米国債利回りが上昇することがある理由も参照してください。
ターム・プレミアムの推計は経済予測でもありません。高い推計値が利回り上昇の継続を保証することはなく、低い値やマイナスの値が長期債の優位を保証することもありません。新しい情報に応じて債券価格は上下します。モデルの出力は、ある時点までに観測された価格の分解案を示すものです。
ターム・プレミアムのチャートはどう読む?
まず満期、日付、指標を確認します。10年ターム・プレミアムは、2年の推計値や将来の5〜10年に対するフォワード・プレミアムとは同じではありません。表示される利回りがクーポン債利回り、当てはめたゼロクーポン利回り、フォワードレートのどれかを確認し、単位がパーセントかベーシスポイントか、年率換算か連続複利かも確かめます。
次に提供元と方法を特定します。ニューヨーク連銀のACM系列、FRB理事会のモデル推計、サンフランシスコ連銀の分解、調査ベースの計算は、入力、標本、定義、更新頻度が異なる場合があります。時系列の変化を測るときは同じモデルを使います。あるモデルのチャートに別モデルの数値を黙って代入し、単一の歴史系列を作らないでください。
最後に、観測利回りと推計成分を区別します。モデルが当てはめた利回りを報告しているか、観測された米国債利回りにどれほど合うか、残差を含むか、データやモデルのパラメーターが改定される可能性があるかを確認します。市場の動きを説明するには複数の指標を使いましょう。ターム・プレミアムのチャートは長期利回りの一部を説明する助けになりますが、それだけで投資家の予想を証明したり唯一の原因を特定したりはできません。
全体を読むには、プレミアムを同じ満期の名目米国債利回りと予想短期金利経路の推計値と併せて見ます。問いに応じて実質利回りやブレークイーブン・インフレ率も参考になりますが、そこにも市場プレミアムが含まれます。モデルの推計、市場価格が示すこと、解釈に残る不確実性をそれぞれ明記するのが重要です。
よくある質問
Q1米国債のターム・プレミアムは直接観測できますか?
いいえ。米国債利回りは観測できますが、将来の短期金利経路とターム・プレミアム成分はモデルから推計するか、調査予想と比較する必要があります。方法が異なれば結果も異なることがあります。
Q2ターム・プレミアムがマイナスになることはありますか?
あります。モデル推計がゼロを下回る場合もあります。そのモデルの定義で推計成分が負という意味であり、米国債利回りがマイナスであることや特定の投資家に損失が保証されることを意味しません。
Q3ターム・プレミアムの上昇は米国債の供給増が利回りを押し上げているという意味ですか?
それだけでは分かりません。供給は一つの要因になり得ますが、需要、インフレと金利の不確実性、ヘッジ価値、投資家のリスク許容力、モデルの前提も影響します。分解だけで原因が一つに特定されるわけではありません。
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問題 01
単純なモデルで10年米国債利回りが4.25%、予想短期金利の平均が3.75%なら、含意されるターム・プレミアム成分はいくらですか?
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