算術平均と幾何平均のリターン:平均10%が年10%成長とは限らない理由
算術平均、幾何平均、年平均成長率CAGRを具体例で比較します。40%上昇後に20%下落するケース、月次収益率の年率換算、保有比率と入出金の扱いを確認できます。
要点
算術平均リターンは各期間の収益率を足して期間数で割ります。幾何平均は実際の複利成長を再現します。1年目に40%上昇し翌年に20%下落すると、算術平均は10%でも資産の増加は2年間で合計12%、年平均の複利成長率は約5.83%です。
平均を選ぶ前にリターン系列の条件をそろえる
同じ投資またはポートフォリオについて、連続する同じ長さの期間を使います。通貨を統一し、期首価値は正、外部からの入出金はないと仮定します。収益の再投資と費用の扱いも明示してください。
各期間の収益率rは小数で表します。40%は0.40、20%の損失は−0.20です。資産に掛ける成長係数はrではなく1 + rです。
算術平均 = (r1 + r2 + ... + rn) ÷ n。観測した1期間のリターンの平均を示しますが、投資を継続した口座の最終残高をそのまま再現する値ではありません。
連続する期間では成長係数を掛けます。累積リターン = (1 + r1) × (1 + r2) × ... × (1 + rn) − 1です。
価格リターンとトータルリターンの基準も統一します。途中で分配金の扱いを変える問題は、平均の選択とは別です。
平均10%なのに2年間の成長が12%となる例
同じ通貨の10,000を丸2年間投資したとします。仮の収益率は1年目が+40%、2年目が−20%です。手数料、分配金、追加入金、出金はありません。
算術平均の10%を毎年複利で適用すると、10,000 × 1.10 × 1.10 = 12,100になります。差額900はこの口座では生じておらず、別のリターン経路の結果です。
数字は独自に設定した仮の計算です。バックテスト、実際の投資成績、予測ではありません。通貨記号を変えても比率は同じです。
- 開始時の価値:10,000。
- 1年目末:10,000 × 1.40 = 14,000。
- 2年目末:14,000 × 0.80 = 11,200。
- 算術平均:(40% − 20%) ÷ 2 = 年10%。
- 累積リターン:11,200 ÷ 10,000 − 1 = 2年間で12%。
幾何平均を計算してCAGRにつなげる
幾何平均リターンは、実際の成長係数を再現する一定の期間収益率gです。(1 + g)^n = (1 + r1) × ... × (1 + rn)を満たします。
したがってg = [(1 + r1) × ... × (1 + rn)]^(1/n) − 1です。リターンそのものではなく、1を加えた成長係数の積からn乗根を求めます。
2年間の例ではg = (1.12)^(1/2) − 1 ≈ 年5.8301%。丸める前の値なら10,000 × (1 + g)^2 = 11,200です。
期間の単位が年なら、この幾何平均が年平均成長率CAGRに相当します。外部入出金がなければCAGR = (期末価値 ÷ 期首価値)^(1/t) − 1で、tは経過年数です。
別の例として10,000が5年で15,000になった場合、累積利益率は50%です。CAGRは(1.5)^(1/5) − 1 ≈ 8.45%であり、50% ÷ 5 = 10%ではありません。
[FINRAの年率換算の解説](https://syndication.finra.org/content/how-are-your-investments-doing-returns-explained)も、複利による年率換算と累積利益を年数で割る計算を区別しています。
同じ平均を比べてもボラティリティ費用を追加しない
+10%、+10%の2年と、+40%、−20%の2年では算術平均が同じです。しかし10,000の最終価値は前者が12,100、後者が11,200です。
成長係数が正なら幾何平均は算術平均を超えません。各期間のリターンがすべて同じときに一致します。これは同じ観測値に対する性質で、無関係なファンドの優劣を決める規則ではありません。
差額は残高からさらに差し引く手数料ではありません。複利の最終価値には既に各リターンの影響が入っています。また、変動の小さい投資が必ず別の投資を上回るという証明でもありません。
[CFA Instituteの平均に関する解説](https://rpc.cfainstitute.org/blogs/enterprising-investor/2015/the-myth-of-volatility-drag-part-1)では、複利計算が和ではなく積である理由を説明しています。
外部入出金がなければ、この固定された2つのリターンを並べ替えても積は同じです。ただし途中の経路や観測ドローダウンは変わり得ます。
月次の平均を年次の成長率と混同しない
月次データから得た幾何平均は月間リターンです。連続12か月すべてで正確に1%を得た場合、年間成長は(1.01)^12 − 1 ≈ 12.68%で、12%ではありません。
この例では12か月全体を指定しています。1か月だけの実績1%を年率換算するのは、同じ成績が続く仮定であり、1年間の実績や予測ではありません。
観測間隔が不均等なら、観測1回あたりの幾何平均が自動的に年率になるわけではありません。期首・期末からCAGRを計算できる条件の下で実際の経過年数を使い、端数年の計算基準も明示します。
年率換算した数字は始点と終点を滑らかにつなぎます。毎年その率を得たことや、途中に大きな損失がなかったことを意味しません。
同時に保有する資産を連続期間のように掛けない
同じ期間に資産Aへ100、資産Bへ900を投資したとします。Aは50%上昇、Bは10%下落し、期末価値は150と810、合計960です。
ポートフォリオ収益率は(960 − 1,000) ÷ 1,000 = −4%。期首比率を使っても0.10 × 50% + 0.90 × (−10%) = −4%です。
+50%と−10%の単純平均+20%は配分を無視します。1.50と0.90を掛けるのも誤りです。これは同じ資金の2期間ではなく、同時に保有した2資産だからです。
外部入出金も別の注意点です。5,000を入金して残高が10,000から15,000になっても、投資で50%増えたとは限りません。
[GIPSのキャッシュフローの扱い](https://www.gipsstandards.org/standards/gips-standards-for-firms/gips-standards-handbook-for-firms/)は、時間加重成績と資金移動の時期・金額を反映するリターンを区別しています。
オプションや証拠金の比率ではなく口座リターンをつなぐ
小額のオプション料に対する利益率は口座全体の利益率とは違います。取引数量、保有期間の重なり、未投資の現金が異なれば、個々の取引リターンを自由に掛け合わせることはできません。
[OICのレバレッジ解説](https://www.optionseducation.org/optionsoverview/leverage-risk)は、オプション料に対する利益率と損失率が拡大し得る理由を示しています。
先物の証拠金は担保であり、エクスポージャーの購入代金ではありません。分母を変えても、原資産に新しい収益が発生するわけではありません。
[CMEの証拠金解説](https://www.cmegroup.com/education/courses/introduction-to-futures/margin-know-what-is-needed)で、その資金の役割を確認できます。
取引比較には先物リターンの分母を参照し、口座の複利計算には一貫した全体評価額を使います。未決済建玉を含め、各費用は一度だけ数えてください。
平均リターンの見出しを受け入れる前に点検する
知りたいのが平均的な観測値、1つの投資の成長、同時保有ポートフォリオの成績のどれなのかを決めます。それぞれ必要な計算が異なります。
正の成長係数の式は、各リターンが−100%を上回ることを前提とします。全損後には複利運用する資金が残りません。口座純資産が負なら、通常のCAGR比較ではなく負債と資金移動を分析します。 [!TRYMARK] TryMark平均リターンの点検 次の成績確認日に、報告された期末価値を検算の目標にします。日付付き口座リターンで再現し、費用、再投資の前提、外部入出金が変わったら再確認してください。 [!WARNING] 過去の平均は繰り返せる成長の保証ではありません 算術平均も幾何平均も翌年のリターンを確定しません。必要利益が大きいことやCAGRが滑らかなことは、レバレッジを増やす根拠ではありません。例は測定方法の説明であり投資推奨ではありません。
- 日付、期間の長さ、通貨、期首・期末価値を記録します。
- 所得、再投資、費用、外部入出金を識別します。
- 年率換算する前に、連続する成長係数から期末価値を再現します。
- 算術平均、累積リターン、期間幾何平均、CAGRを別々に表示します。
よくある質問
算術平均がプラスでも投資額が減ることはありますか?
あります。仮の年率+30%、−25%は平均+2.5%ですが、1.30 × 0.75 = 0.975です。算術平均がプラスでも2年間で資金は費用前2.5%減ります。
幾何平均は常にCAGRと同じですか?
期間の単位と年率換算が一致するときだけです。年次リターンの幾何平均は年率、月次なら月率です。CAGRは明示された資金移動の前提の下で成長を年単位で表します。
算術平均という計算自体が間違いですか?
違います。観測した期間リターンの平均を正しく要約します。誤りは、その統計値を投資の期末価値を再現する一定の複利収益率として扱うことです。
追加入金後も最初と最後の残高でCAGRを計算できますか?
投資成績としてそのまま使うことはできません。入出金は運用損益とは別に残高を変えます。日付付きの外部資金移動を分け、目的に合う時間加重または金額加重の方法を選びます。