逆イールドカーブとは?景気後退シグナルとしての意味
米国債のスプレッドがマイナスになる意味、10年・2年と10年・3カ月の違い、景気後退シグナルとしての限界を解説します。
このガイドの内容1. 逆イールドカーブとは何か
短い要約
米国債の逆イールドカーブとは、比較する長期金利が短期金利を下回る状態です。景気減速のリスクを示すシグナルとして注目されますが、景気後退の原因でも、発生時期や発生そのものを保証するものでもありません。
1. 逆イールドカーブとは何か
イールドカーブは、同じ時点における異なる満期の国債利回りを並べて比較したものです。一般に「通常」とされる形では長期の利回りが短期を上回ることが多く、長い期間債券を保有するほど不確実性も増えるためです。ただし、金利見通しや市場環境によってカーブの形は変わります。
傾きを見るときはスプレッドを使います。計算は長期利回り − 短期利回りです。プラスなら長期利回りが高く、マイナスなら比較した短期利回りの方が高いため、その区間が逆転しています。「逆イールド」はある時点の二つの利回りの関係を表す言葉で、すでに景気後退が始まったという意味ではありません。
2. 米財務省のカーブは取引記録そのものではない
米財務省の公式なパー・イールドカーブは、選定された米国債の買い気配側の参考値を当てはめ、補間して作られます。そのため各点は特定満期に対応するパー利回りの推計値であり、その満期ぴったりの債券がその利回りで約定した記録ではありません。財務省の方法論は入力値と作成方法を説明しており、[日次の米国債パー・イールドカーブデータ]({source:treasuryDailyParYieldCurve})では満期別の系列を確認できます。
この違いはグラフを読むときに重要です。標準的な満期のパー利回りは、個別債券のクーポン、満期日、市場価格から計算する最終利回りと必ずしも一致しません。スプレッドを計算する前に、比較する二つの系列の定義がそろっているかを確認してください。[米財務省のイールドカーブ手法]({source:treasuryYieldCurveMethodology})では、各点がカーブから推計された値であることが説明されています。
3. 10年・2年か、10年・3カ月か
逆イールドの議論で使われるスプレッドは一つだけではありません。よく見られるのは、10年利回りから2年利回りを引くものと、10年利回りから3カ月利回りを引くものです。計算方法は同じですが短期側の満期が異なるため、二つの数値が一致するとは限りません。
どの満期を使うかは、モデルを説明するときにも大切です。ニューヨーク連銀のイールドカーブ指標は、10年 − 3カ月のスプレッドを使い、今後12カ月以内の米国の景気後退確率を推計します。これはニュースやグラフでよく取り上げられる10年・2年スプレッドとは別です。[FREDの10年・2年米国債スプレッドグラフ]({source:fred10YearTreasurySpreads})はその組み合わせを見るのに役立ちますが、ニューヨーク連銀のモデルを説明するときに10年・3カ月の系列と混同しないでください。[ニューヨーク連銀のイールドカーブ指標FAQ]({source:newYorkFedYieldCurveLeadingIndicator})に、満期の選択とモデルの範囲が説明されています。

4. 仮の数字でスプレッドを計算する
以下は計算方法を示すための架空の例で、現在の市場データではありません。10年利回りが4.00%、2年利回りが4.40%だとすると、次のようになります。
10年・2年スプレッド = 4.00% − 4.40% = −0.40パーセントポイント = −40ベーシスポイント
別の架空例で、10年利回りが4.00%、3カ月利回りが4.80%なら、計算は次のとおりです。
10年・3カ月スプレッド = 4.00% − 4.80% = −0.80パーセントポイント = −80ベーシスポイント
1パーセントポイントは100ベーシスポイントです。どちらの例もマイナスですが、短期側の利回りが違うため大きさも異なります。ここに挙げた数値は算数の説明だけを目的とした仮定で、米国債の気配値や最新データではありません。
5. なぜカーブは逆転するのか
長期利回りには、その満期までの将来の短期金利に対する市場予想と、不確実な期間プレミアムが反映されます。たとえば成長やインフレが鈍化すると市場が予想し、将来の短期金利が下がる見通しになれば、長期利回りが現在の短期金利を下回ることがあります。一方で、長期債への需要、国債の供給、リスクや期間プレミアムも利回りを動かします。
期間プレミアムは直接観測できず、モデルの仮定に基づいて推計されます。[米連邦準備制度理事会のタームストラクチャーモデル]({source:federalReserveTermStructureModel})は、短期金利の予想経路と期間プレミアムを分けて推計しますが、モデルによる推計は慎重に扱う必要があります。複数の要因が同時に動くため、逆イールドは読み解くべき市場シグナルであって、カーブ自体が景気後退を引き起こす証拠ではありません。
6. 景気後退のシグナルとしてどこまで役立つか
逆イールドは、市場が将来の短期金利を現在より低く見込んでいる可能性を示します。金利見通しや経済見通しの変化が景気循環と関係しうるため、注目される指標です。ただし、景気後退がいつ始まるかを特定したり、必ず起きると保証したり、経済活動の落ち込みの深さを示したりするものではありません。
ニューヨーク連銀のモデルは10年・3カ月スプレッドを使い、12カ月先の景気後退確率を推計します。確率はモデルの出力であり、将来の出来事が確実だという意味ではありません。またニューヨーク連銀は、このモデルがニューヨーク連銀、その総裁、連邦準備制度、またはFOMCの公式予測ではないと説明しています。[ニューヨーク連銀の指標解説]({source:newYorkFedYieldCurveLeadingIndicator})には12カ月という予測期間も記載されています。モデルの数値を「景気後退がすでに始まった」という発表と取り違えないようにしましょう。
7. 市場シグナルと景気後退の認定は別
米国では、全米経済研究所(NBER)が景気循環の山と谷を事後的に判定します。景気後退は、経済活動の顕著な低下が経済全体に広がり、数カ月を超えて続く状態と説明されています。委員会は落ち込みの深さ、広がり、期間に加え、月次の複数指標を検討します。一つの統計だけで判定するわけではありません。[NBERの景気循環日付決定の説明]({source:nberBusinessCycleDating})で考え方を確認できます。
実質GDPが2四半期続けてマイナス成長になることは、NBERが採用する固定ルールではありません。GDPは重要ですが、判定では他の指標や月ごとの動きも見られ、十分なデータがそろってから日付が決まることがあります。そのため逆イールドは景気後退の公式認定ではなく、市場シグナルと認定日の間に時間差が生じる場合があります。
8. スプレッドを慎重に読む方法
グラフやニュースを見るときは、比較する満期、観測日、系列の出所、米財務省のパー利回りか別の指標かを確認しましょう。同じ定義の系列を時系列で比べ、異なる満期の組み合わせや一日だけの動きから結論を出さないことが大切です。モデルや期間プレミアムの推計にも不確実性があります。
イールドカーブは、インフレ、雇用、支出、産出を示す他の指標と並べて見る手掛かりの一つです。関連する経済指標については、名目GDPと実質GDP、CPI・PCE・GDPデフレーター、失業率のU-3とU-6も参照してください。スプレッドが示すのは特定満期間の利回り差であり、経済全体の完全な尺度でも、景気後退の約束でもありません。
よくある質問
Q1米国債の逆イールドは、景気後退がすでに始まったことを意味しますか?
いいえ。逆イールドとは、比較した長期利回りが短期利回りを下回る状態です。米国の景気後退は、複数の経済活動指標を使ってNBERが事後的に日付を決定します。
Q210年・2年と10年・3カ月のスプレッドは置き換えて使えますか?
いいえ。満期の組み合わせが違うため、数値も解釈も異なることがあります。ここで説明したニューヨーク連銀のモデルは、特に10年・3カ月スプレッドを使います。
Q3米財務省のパー利回りは、特定の債券の取引価格ですか?
いいえ。パー・イールドカーブは買い気配側の参考値を当てはめ、補間して作られます。ある満期の点はカーブ上の推計値であり、その満期ぴったりの債券の取引を示すものではありません。
出典
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問題 01
10年・3カ月スプレッドはどう計算しますか?
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