実質GDP成長率と一人当たりGDP成長率の違い
経済全体の実質産出と一人当たり実質産出が異なる伸び方をする理由、人口を計算に含める方法、平均値だけでは分からないことを解説します。
このガイドの内容GDP成長率と一人当たりGDP成長率が異なるのはなぜ?
短い要約
実質GDP成長率は、経済全体の生産量がどれだけ変化したかを示します。一人当たり実質GDP成長率は、その変化を人口の増減で調整し、住民一人当たりの平均的な生産量がどう変わったかを表します。どちらの数字も、一般的な世帯がどれだけの収入を得たかを示すものではありません。
GDP成長率と一人当たりGDP成長率が異なるのはなぜ?
実質GDPは、経済の中で生産された最終財・サービスの量を物価変動の影響を除いて測ります。米国経済分析局(BEA)は、実質GDPを基準年と比べた米国の生産の連鎖方式による数量指標として説明しています。{source:beaRealGdpDefinition} 一人当たりGDPは、GDPを人口で割った値です。たとえば世界銀行の年次一人当たりGDP指標では、年央人口を使うと定義されています。{source:worldBankGdpPerCapitaDefinition}
二つの指標は関連していますが、答える問いは異なります。実質GDPの合計は、経済全体の生産が増えたか減ったかを示します。一人当たり実質GDPは、分母に使う人口よりも生産が速く増えたか、それとも遅く増えたかを示します。人口が増えれば、総生産が拡大していても一人当たりの生産はより緩やかに伸びることがあります。人口が減れば、総生産が縮小する一方で一人当たりの生産が増えることもあります。
「一人当たり」は一人につきという意味ですが、これは平均の比率です。実際に全員が生産物を均等に受け取るという意味ではありません。この計算は、経済全体の生産フローを人口と比べたもので、個々の世帯を追跡するものではありません。
一人当たり成長率はどう計算する?
実質GDPをY、人口をPとします。一人当たりGDPはYをPで割った値です。同じ二つの時点を使う場合、成長率どうしには次の正確な関係があります。
一人当たり成長率 = (1 + 実質GDP成長率) ÷ (1 + 人口増加率) − 1
式には成長率を小数で入れます。3%は0.03、1%は0.01です。両方の成長率が同じ開始日と終了日を使い、GDPと人口の定義も一致していれば、この比率は正確です。変化が小さいときは、次の近似がよく使われます。
一人当たり成長率 ≈ 実質GDP成長率 − 人口増加率
この近似は暗算には便利ですが、成長が複利で積み上がるため厳密ではありません。産出と人口の両方が変わると、正確な率には差が出ます。対数成長率で表すと、実質GDP一人当たりの対数変化は、実質GDPの対数変化から人口の対数変化を引いたものになります。
総GDPの変化率と一人当たりの水準の変化を混同しないでください。まず二つの時点をそろえ、その同じ期間のGDP成長率と人口増加率を求めてから、この比率を使います。
仮の例:GDPが3%成長しても一人当たりでは3%とは限らない
実質GDP指数が1年間に100から103へ上がったとします。実質GDP全体の成長率は3%です。同じ期間に対象人口の指数が100から101へ上がれば、人口増加率は1%です。新しい一人当たり指数は103を101で割った約101.98です。したがって、一人当たり成長率は3%ではなく約1.98%です。
成長率を引き算すると、3% − 1% = 2%です。この例では近似値は正確な値に近いものの、厳密な計算は1.03を1.01で割って1を引くため、約1.98%になります。ここで使った指数は計算方法を示すための仮定で、特定の国のデータや予測ではありません。
比較する期間もそろえる必要があります。暦年の実質GDP成長率と、年央から翌年央までの人口変化を組み合わせる方法は年次比較として妥当な場合がありますが、統計機関が公表する一人当たり系列と必ず一致するとは限りません。それぞれの系列が使う日付と人口の算出方法を確認してください。
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総GDPが増えても一人当たり産出が減ることはある?
人口増加率が実質GDP成長率を上回れば起こりえます。実質GDPが2%増える一方で人口が3%増えた場合、一人当たりの変化は1.02を1.03で割って1を引いた約マイナス0.97%です。総生産は増えていますが、平均値の分母となる人口の伸びがより速かったためです。
人口が減ると逆のことが起こりえます。実質GDPが1%減少し、人口が2%減少したとします。一人当たり産出の変化は0.99を0.98で割って1を引いた約1.02%です。これは景気縮小の損失がなかったことを意味しません。総生産は減り、平均の分母も小さくなっています。この計算だけでは、誰が転出し、誰が残ったか、労働時間、公共サービス、世帯ごとの状況は分かりません。この例も仮定です。
このように、人口動態によって実質GDPの定義を変えずに二つの成長率の差が広がったり縮まったりします。ある国では総GDPが増える一方で一人当たりGDPが減ることも、その逆もあります。「経済が成長した」とだけ言うのではなく、どちらの指標を指すのか明示してください。
分母に使う人口はどれ?
一人当たり統計を比較できる範囲は、分母となる人口の定義にも左右されます。年次系列の中には年央の人口推計を使うものがあり、別の統計では年間平均や異なる基準日の人口を使う場合があります。世界銀行の対象指標は年央人口を使うと明記しています。{source:worldBankGdpPerCapitaDefinition} 他の機関も同じ方法を使うとは限らないため、メタデータを確認してください。
誰を数えるかも確認しましょう。居住者の定義、国勢調査の対象範囲、施設人口の扱い、出生・死亡・移民の推計改定によって、国の人口推計は異なることがあります。単純な年次比較では、各統計系列がその年について定義した産出と人口の観測値を組み合わせます。自分で比率を作る場合は、対象範囲の異なる系列を無意識に組み合わせず、日付と定義を記録してください。
四半期比較では、GDP成長率を年率換算しても、それに対応する人口変化率が自動的に年率になるわけではありません。同じ比較期間を使うか、両方を一貫した方法で換算します。GDP統計が直近四半期と前四半期を年率で比較している場合、前年比の人口増加率を差し引かないでください。異なる期間を混ぜることになります。
一人当たりGDPは生産性と同じ?
いいえ。一人当たりGDPは、統計の対象となる全人口で生産を割った値です。労働生産性は通常、労働時間当たり、または就業者一人当たりの産出を測ります。全人口には子ども、退職者、学生、介護を担う人、求職中の人など就業していない人も含まれます。一人当たりGDPの変化には産出、人口構成、雇用、労働時間など複数の要因が反映されることがあります。
労働時間当たり産出は、労働投入に対してどれほどの生産が行われたかに近い指標ですが、一人当たり産出と置き換えられるものではありません。有給の仕事に就く人が増える、労働時間が変わる、時間当たり産出が上がる、年齢構成が変わる、といった変化でも一人当たりGDPは上がる可能性があります。この比率だけでは、そうした経路を切り分けられません。要因を分解するには、労働力、労働時間、雇用、生産性の指標も確認してください。労働生産性と多要素生産性も参考になります。
一人当たりGDPの伸びが速ければ、一般の人の暮らしも良くなる?
平均生産の有用な手がかりにはなりますが、一般的な個人の所得や生活状況を直接測る数字ではありません。GDPは経済の中で生産されたものを記録します。そこから生まれた所得の一部は企業、政府、非居住者に帰属することがあり、反対に居住者が海外での生産から所得を受け取ることもあります。世界銀行によるGDPと国民総所得(GNI)の比較は、生産と居住者所得の違いを説明しています。{source:worldBankGdpGniConcepts} 一人当たりGDPは生産や所得がどう分配されたかも示しません。OECDは一人当たりGDPを有用な基準としつつ、生産を基にした平均では幸福のあらゆる側面を捉えられないと説明しています。{source:oecdGdpPerCapitaLimits}
一人当たりGDPが同じだけ増えた二つの仮想経済を考えてみましょう。一方では、生産に関連する所得が多くの世帯で広く増えるかもしれません。もう一方では、増加分の大半が少数の人や居住者以外の所有者に帰属するかもしれません。平均生産の比率が同程度でも、家計の実感は異なることがあります。居住者の所得を見るにはGDPとGNIを比べ、世帯を調べるには世帯所得や分配の指標を使います。GDP・GNI・GNPの違いもご覧ください。
一人当たり実質GDPには、無償労働、余暇、健康、安全、環境コスト、GDPの生産境界に含まれない活動の価値も反映されません。包括的な厚生スコアではありません。生産を一人当たりで見ることが目的なら、有用な平均産出指標です。
公表された成長率はどう比較する?
数字を解釈する前に、次の5点を確認してください。
- 産出指標は実質GDPですか、それとも名目GDPですか。
- 総GDPですか、それとも一人当たりGDPですか。
- どの日付の間を、どの成長率の慣例で比べていますか。
- 人口の定義と基準日は何ですか。
- 数字は同じ統計公表時点の推計ですか。
一つの国の時系列をみるとき、実質GDPと対応する人口系列を使えば、一人当たりの平均産出が増えたか減ったかを確認できます。世界銀行の定義は人口の算出方法を明示する一例です。他の統計提供者の方法は別途確認してください。名目産出と物価調整後の産出の違いは名目GDPと実質GDPをご覧ください。労働市場の比率はより限定された人口を使い、別の問いに答えます。労働参加率と就業者人口比率も参考にしてください。
国どうしを比べるときは、成長率と水準を区別します。成長率は時間による変化を比べ、一人当たりの水準はある時点または期間の一人当たり産出を比べます。国際的な水準比較では、通貨、価格基準、購買力調整をそろえる必要があります。 世界銀行は、こうした比較に購買力平価が使われる理由と、その限界を説明しています。{source:worldBankIcpPppUses} 一人当たりGDPの水準が高くても、世帯の所得中央値が高いことや、国内生産の価値がすべて居住者に渡ることが、それだけで証明されるわけではありません。
よくある質問
Q1一人当たりGDP成長率はGDP成長率から人口増加率を引けばよい?
成長率が小さい場合は近い近似になります。正確な関係では両方の変化を複利で計算します。GDP成長率に1を足した値を、人口増加率に1を足した値で割り、1を引きます。両系列の期間と定義もそろえてください。
Q2景気後退中に一人当たりGDPが増えることはある?
あります。総GDPが減少しても、人口がそれ以上の割合で減れば比率が上がることがあります。この計算結果だけでは、すべての住民の暮らしが良くなったとも、景気後退の悪影響がなかったとも言えません。
Q3一人当たりGDPは住民の平均所得?
いいえ。GDPは各住民が受け取った所得ではなく、経済の中で行われた生産を測ります。一人当たりGDPはその生産額を人口で割ったもので、所得が誰に帰属したかや世帯所得の中央値は分かりません。
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問題 01
実質GDPが3%増え、対応する人口指標が1%増えました。一人当たり実質GDPの成長率はおよそ何%ですか。
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