GDP・GNP・GNIの違い:生産地と所得の範囲
GDP、GNP、GNIの違いを、国内生産、経済的居住者、国境を越える第一次所得の関係から整理します。
このガイドの内容1. まず違いを一言で:生産の場所か、居住者との結び付きか
短い要約
GDP(国内総生産)は経済領域内で行われた生産を数えます。GNP(国民総生産)は、経済的居住者が提供する労働や資産に結び付く生産を、場所を問わず捉えます。GNI(国民総所得)は、GDPに国境を越える第一次所得の受取と支払を反映します。ここでいう「居住者」は、パスポートの国籍ではなく、経済活動の中心がどこにあるかを指します。
1. まず違いを一言で:生産の場所か、居住者との結び付きか
GDPが答えるのは「この期間に経済領域内で生産された最終財・サービスはいくらか」です。生産された場所が基準なので、そこで働く人や企業の所有者が居住者か非居住者かは決め手になりません。[米国経済分析局(BEA)のGDP学習ページ]({source:beaGdpLearningCenter})も、GDPを国内での生産として紹介しています。
GNPとGNIは経済的居住者との関係に注目します。大まかにいうと、GNPは居住者が提供する労働や資産による生産を捉え、GNIは居住者に帰属する第一次所得を捉える指標です。GNPとGNIは概念上対応する国民指標です。公表値が異なる場合は、統計上の不突合や別々の推計過程による差を確認し、機関の定義を読みましょう。
2. GDPは生産が行われた場所で決まる
経済領域内の工場が外国企業に所有されていても、その工場で行われた生産はその地域のGDPに含まれます。逆に、居住者企業が海外の事業所で生産した分は、企業の所有者がどこの居住者であっても、その生産場所に基づく別の経済のGDPに入ります。[BEAの国内総生産の説明]({source:beaGrossDomesticProduct})では、国内生産の境界を確認できます。
GDPでは最終財・サービスを数え、中間投入を重複して足しません。パンの価格に小麦粉の価値が含まれているなら、小麦粉とパンの両方を完成品として加算すると同じ生産の一部を二重計上してしまいます。GDPは国内の生産活動を測るもので、市民が所有する資産や家計が得る所得の総額を示すものではありません。
3. 経済的居住者は国籍やパスポートと同じではない
国民経済計算でいう居住者は、家計、企業、政府などの制度単位が経済的な利害の中心を置く場所を基準に判定します。判定は統計上の基準と経済的な関係の継続性に沿って行われ、国籍、出生地、パスポートだけで決まりません。日本国籍を持つ人でも、生活と経済活動の中心が長期にわたって海外にあれば、すべての統計で日本の経済的居住者と扱われるとは限りません。反対に、外国籍の人が国内に経済活動の中心を持つこともあります。BEAの米国統計では、個人について米国に1年以上居住しているか、1年以上居住する見込みかという基準も用います。これは統計上の居住地の運用基準で、国籍の判定ではありません。[BEAの米国居住者の定義]({source:beaUsResidents})を参照してください。
この区別があるため、GDPとGNP・GNIでは集計範囲が違います。前者は生産場所、後者は居住者との関係を基準にします。賃金、利子、配当などが国境を越えて動いても、パスポートが変わるわけではありません。[世界銀行のGDPとGNIの概念説明]({source:worldBankGdpGniConcepts})は、国内生産と海外からの純第一次所得を結び付ける考え方を整理しています。
4. GNIの式と、貿易収支との違い
国際的な概念式は次のとおりです。
GNI = GDP + 海外からの第一次所得受取 − 海外への第一次所得支払
第一次所得には、分類に応じて労働への報酬や、金融・非金融資産からの利子、配当などが含まれます。受取は居住者に帰属する海外からの所得、支払は国内生産などに関連して非居住者へ帰属する所得です。[BEAの国民総所得の説明]({source:beaGrossNationalIncome})でも、この調整の考え方を確認できます。BEAの米国国際取引勘定では、個人送金(remittances)は第一次所得ではなく、第二次所得に含まれる経常移転に分類されます([BEAの国際勘定の分類]({source:beaInternationalAccountClassifications}))。
これは貿易収支とは別です。輸出から輸入を引いた財・サービスの純輸出は、支出面から見たGDPの恒等式 GDP = 消費 + 投資 + 政府支出 + 輸出 − 輸入 に含まれます。GNIの式が調整するのは第一次所得です。海外にサービスを販売することは輸出であり国内生産ですが、海外投資から配当を受け取ることは第一次所得です。どちらも国境を越えますが、勘定上は別の項目です。

5. 仮定の例:GDP 1,000単位からGNI 960単位へ
ある架空の経済のGDPが1,000単位だとします。居住者は海外から第一次所得を70単位受け取り、非居住者に110単位を支払います。海外からの純第一次所得は 70 − 110 = −40単位 です。したがって概念式では GNI = 1,000 + 70 − 110 = 960単位 となります。
この数字は計算の仕組みを示すための仮定であり、特定の国や時点の実績ではありません。支払が受取を上回るため、例ではGNIがGDPを下回ります。受取のほうが多ければ、純調整がプラスになることもあります。GDPとGNIの差だけでは、賃金、利子、配当などの内訳は分からないので、詳しい説明には各項目の統計を確認します。
6. GDP、国内総所得、GNP、GNI:BEAの公表値を読む
国内総所得(GDI)は、国内生産によって生じた所得を所得側から測る指標です。概念上、GDPとGDIの値は等しくなるはずです。しかしGDPとGDIは別々の情報源と推計方法から作成されるため、実際の推計値は一致しないことがあります。GDIは国内の所得指標であり、GNIと同じものではありません。BEAのNIPAハンドブックは、生産・所得勘定における国内と国民の範囲の違いを説明しています。[BEA NIPAハンドブック 基礎編]({source:beaNipaHandbookFundamentals})も参照してください。
BEAの米国統計では、GNIはGDIに海外からの第一次所得受取を加え、海外への第一次所得支払を差し引く形で示されます。BEAは GNI = GNP − 統計上の不突合 という関係も示しています。各勘定が独立に推計されるため値が異なる場合がありますが、統計上の不突合を別にすれば、概念上対応する国民指標が別の経済実態を表しているという意味ではありません。[BEAの国内総所得]({source:beaGrossDomesticIncome})と[国民総生産]({source:beaGrossNationalProduct})の定義も参照してください。
7. 「総」は資本の消耗を引いていない
「総(gross)」の指標には、生産設備や建物などの固定資本を使うことで生じる消耗分が差し引かれていません。純(net)の指標では固定資本減耗を差し引きます。GNIの式にある「海外からの純第一次所得」は受取と支払の差を指すので、資本減耗を引いて純額にする話とは別の調整です。BEAのNIPAハンドブックでは、固定資本減耗を踏まえた総額と純額の違いが説明されています。[BEA NIPAハンドブック 基礎編]({source:beaNipaHandbookFundamentals})を参照してください。
また、GNIは国全体の集計値で、各世帯の平均手取り収入、税引き後の可処分所得、あるいは生活の質そのものではありません。所得が誰にどの程度分配されるか、生活費や公共サービスがどの程度かも、GNIだけでは分かりません。同じGNIの経済でも人口規模や分配状況は異なり得ます。家計の実情を知りたいときは、世帯所得や分布の統計も合わせて見ます。
世界銀行によると、一人当たり実際個別消費(AIC)は、家計が実際に消費する個別の財・サービスを捉えます。家計自身が購入するものに加え、政府や対家計民間非営利団体(NPISH)が提供し、家計が消費するサービスも含みます。こうしたサービスが家計消費で重要な割合を占める場合、平均的な物質的豊かさを比べる指標として、AICは家計の消費支出だけより概念上有益なことがあります。ただし、AICも平均消費の指標であり、福祉全体や所得分配を完全に表すものではありません([世界銀行のGDPとGNIの概念説明]({source:worldBankGdpGniConcepts})).
8. 問いに合う指標を選び、比較条件をそろえる
国内で行われた生産を知りたいならGDPを、居住者との結び付きに関心があるならGNPやGNIを確認し、公表機関の定義も読みます。価格変化を除いた生産量の見方は名目GDPと実質GDP、物価指標の範囲はCPI・PCE・GDPデフレーターで解説しています。財政赤字と政府債務は政府のフローとストックの話で、生産地の境界とは別の論点です。
数値を比べる前に、対象国、期間、居住者の定義、国境を越える所得の範囲、総額か純額かを記録しましょう。推計値が改定されていないか、通貨換算の方法がそろっているかも確認します。GDP、GNP、GNIのどれも、それ一つで家計の生活や個人の選択を説明するものではありません。
よくある質問
Q1海外で働く自国民は、必ず自国の経済的居住者ですか?
必ずそうとは限りません。国民経済計算の居住地は国籍とは異なり、経済的な結び付きの中心や統計上の基準で決まります。
Q2GNIは輸出から輸入を引いた額ですか?
いいえ。輸出と輸入の差は支出面のGDPに含まれます。GNIはGDPに、海外から受け取る第一次所得を加え、非居住者に支払う第一次所得を差し引きます。
Q3GDPと国内総所得の公表値が違うことがあるのはなぜですか?
国内の同じ生産活動を別々の統計情報から推計するため、実際の推計値には差が出ることがあります。国内総所得は国内指標で、国民総所得とは別です。
出典
問題を報告
この記事のリンクを含むメールを準備します。送信すると Mark に報告が届きます
クイックチェック
記事を読み終えたら、3問で確認しましょう
問題 01
外国企業が所有する工場が経済領域内で生産しています。その生産を含むのはどの指標ですか?
答えを選ぶと解説を確認できます
オプション用語集
コール、プット、オプションチェーンから IV、グリークス、建玉、マックスペインまで、主要用語を正確に解説します
オプション用語集を見る