労働力率と就業率の違い:米国の雇用統計を読む
米国の労働力率、就業率、失業率U-3を、式と仮定例、CPSの分類方法から解説します。
このガイドの内容1. 三つの比率、二種類の分母
短い要約
労働力率(LFPR)は労働力人口を16歳以上の民間・非施設居住人口で割った比率です。就業率(EPOP)は同じ母集団を使いますが、分子は就業者だけです。失業率U-3の分母は母集団全体ではなく労働力人口です。
1. 三つの比率、二種類の分母
米労働統計局(BLS)の統計では、三つの指標はいずれもCurrent Population Survey(CPS)に基づきます。式は次のとおりです。
- LFPR=労働力人口÷16歳以上の民間・非施設居住人口×100
- EPOP=就業者数÷同じ母集団×100
- U-3=失業者数÷労働力人口×100
労働力人口は、CPSで就業者または失業者に分類された人の合計です。LFPRは、基準人口のうち働いている人、または失業者の定義を満たす人の割合を表します。EPOPは働いている人の割合です。U-3は「労働力人口のうち、何割が失業者か」という問いに答えます。[BLSのCPS概念と定義]({source:blsCpsConcepts})で対象の分類を確認できます。
米国の母集団は、すべての居住者を無条件に含むものではありません。全国CPSでは、50州とコロンビア特別区に住む16歳以上の民間人を対象とし、施設に入っている人や現役の軍人は除きます。この範囲は米国統計の定義であり、他国の労働統計と自動的に一致するわけではありません。
2. CPSは就業と失業をどう分類するか
CPSは毎月実施する世帯調査です。調査対象者の状態は、基準週の仕事と求職活動に基づき、失業給付を受け取っているかどうかでは決まりません。一般に、基準週に有給の仕事を1時間以上した人、自分の事業で1時間以上働いた人、家族が営む事業で15時間以上無給で働いた人、または仕事を一時的に休んでいた人は就業者です。
仕事をしていない人は、基準週に働くことが可能で、直前4週間に積極的な求職活動をしていれば、通常は失業者に分類されます。一時的なレイオフ中で復職を待っている人には別の扱いがあります。仕事がなく失業者の条件も満たさない人は、労働力人口の外に分類されます。[BLSの失業統計の測定方法]({source:blsGovernmentMeasuresUnemployment})に基準が説明されています。
このため、「働きたい」という希望だけではU-3の失業者になるとは限りません。求職条件を満たさなくなった人は、仕事が決まっていなくても失業者から労働力人口の外へ移ることがあります。反対に、積極的に求職を始めた人は、就職する前に失業者として労働力人口へ入る場合があります。
3. 仮定の人数で計算する
CPSの基準人口が仮に1,000人いて、就業者が600人、CPSの条件による失業者が40人、労働力人口の外にいる人が360人だとします。労働力人口は640人です。次の数字は計算方法を示すための仮定で、BLSの実績値や特定月の状況ではありません。
| 指標 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| LFPR | 640÷1,000×100 | 64% |
| EPOP | 600÷1,000×100 | 60% |
| U-3 | 40÷640×100 | 6.25% |
LFPRとEPOPの分母は同じ1,000人なので、基準人口に占める割合として比較できます。U-3は労働力人口640人が分母です。したがって6.25%は、1,000人全体の6.25%が失業者という意味ではありません。この仮定では失業者は1,000人のうち40人、つまり4%ですが、この割合はU-3ではありません。

4. 人が労働力人口から出るとどうなるか
次に、失業者40人のうち5人が基準週直前の4週間に一度も積極的に求職しておらず、一時的にレイオフされて復職を待つ例外にも該当しないとします。仕事は得ていないため就業者は600人のままです。この例では、5人は失業者の要件を満たさなくなって労働力人口の外に移り、基準人口は1,000人のままとします。
労働力人口は640人から635人へ、失業者は40人から35人へ減ります。その結果、LFPRは64%から63.5%に低下し、EPOPは60%のままです。U-3は40÷640=6.25%から35÷635≒5.51%に低下します。就業者が増えていないのにU-3が下がるのは、5人が労働力人口の外に分類され、U-3の分母も小さくなるためです。
これは母集団を固定した分類上の仮定で、求職をやめる人全員に同じ理由や状況があるという意味ではありません。働く希望を持つ人の一部は「周辺的に労働力に結び付いた人」としてCPSの別区分に入る場合があり、より広いU-6の指標では考慮されます。U-3とU-6の違いでは、その範囲を説明しています。
5. LFPRとEPOPが異なる動きをする理由
基準人口と定義がそろっていれば、LFPRとU-3は算術的にEPOPと結び付きます。労働力人口は就業者と失業者の合計なので、次の関係が成り立ちます。
EPOP=LFPR×(1−U-3の失業率)
掛け算には比率を小数に直して使います。最初の例では0.64×(1−0.0625)=0.60となり、EPOPは60%です。労働力人口から人が出た後も、0.635×(1−0.0551)≒0.60です。この関係は、LFPRとU-3が下がってもEPOPが変わらないことを説明します。公表値は丸められているため、計算結果に小さなずれが出ることがあります。
実際には基準人口も変わり、就業者、失業者、労働力人口外の人の数も動きます。LFPRの変化は労働力人口への流入・流出を反映することがあり、EPOPの変化は基準人口に対する就業者の割合を表します。高齢化、就学、家族の介護、健康、移住、労働需要のどれが原因かは、どちらの比率だけでも分かりません。全体値を読むときは年齢や人口集団の内訳も確認しましょう。
6. 比率から分かること、分からないこと
LFPRはCPSの定義に基づく労働参加を示し、現在働いている人の割合そのものではありません。EPOPは基準人口に対する就業者の割合をより直接に示しますが、労働時間、賃金、仕事との技能の適合、雇用の安定性、もっと働きたいかどうかは測りません。同じEPOPでも、労働力人口とその外にいる人の構成が異なることがあります。
いずれも生活の質や満たされていない労働需要を完全に測る指標ではありません。集計値だけでは、各人が労働力人口の外にいる理由、求職期間、世帯ごとの事情は分かりません。失業率と生産の関係を知りたい場合は、雇用統計の定義とは別の問いを扱うオークンの法則とGDPも参照してください。
7. 調査の限界と時系列の比べ方
CPSは全住民を一人ずつ数えるのではなく、世帯標本から就業状態を推計します。BLSは回答にウェイトを付け、対象人口を代表するように集計します。このため、標本誤差と非標本誤差の影響を受けます。回答のばらつき、未回答、分類ミスなどもあり得るので、月ごとの小さな変化だけで基礎的な労働市場の大変化を断定できない場合があります。
月やグラフを比較するときは、年齢と対象人口、参照期間、季節調整の有無をそろえます。季節調整済みの系列は同じ処理の系列と比較し、未調整値と混ぜないようにします。手法や人口統制値、系列の改定は過去との比較にも影響します。[BLSのCPS方法論ハンドブック]({source:blsCpsHandbook})は調査設計、ウェイト付け、推計方法を扱っています。別の経済指標を見るなら、名目GDPと実質GDPは生産について異なる問いに答えます。
8. 問いに合う指標を選ぶ
「CPSの定義で、基準人口の何割が働くか仕事を探しているか」を知りたいときはLFPRを見ます。「基準人口の何割が就業者として分類されているか」ならEPOPです。「労働力人口の何割が失業者か」ならU-3です。構成要素を共有するため相互に関係しますが、分母は同じではありません。
U-3が下がったら、より多くの人が働き始めたと結論づける前にLFPRとEPOPも比べます。EPOPが上がった場合は、年齢層や季節要因の影響も確認します。LFPRが下がった場合も、データを追加せず原因を一つに決め付けないでください。期間、対象人口、BLSの定義を明記すると解釈が明確になります。
よくある質問
Q1EPOPは失業率を1から引いた値ですか?
いいえ。EPOPは16歳以上の民間・非施設居住人口に対する就業者の比率で、U-3は労働力人口に対する失業者の比率です。算術的に関係しますが、分母が異なります。
Q2誰も就職しなくてもU-3が下がることはありますか?
あります。失業者の一部がCPSの求職基準を満たさなくなって労働力人口の外へ移ると、U-3の分子と分母から外れます。就業者と人口が変わらない仮定では、U-3とLFPRが下がってもEPOPは一定のままです。
Q3LFPRの低下は、人々が働きたくなくなったことを意味しますか?
比率だけからは分かりません。LFPRはCPSの基準に従い、働いているか失業者に分類される人口の割合を示します。集計比率から一人ひとりの状態変化の理由は分からず、CPSは世帯標本から推計します。
出典
問題を報告
この記事のリンクを含むメールを準備します。送信すると Mark に報告が届きます
クイックチェック
記事を読み終えたら、3問で確認しましょう
問題 01
米国の労働力率の分子と分母はどれですか?
答えを選ぶと解説を確認できます