ETFのトラッキング差とトラッキングエラー:誤差ゼロでも指数に負ける理由
ETFと指数の収益率差と、その変動性を分けて計算します。架空の月次リターンで標本標準偏差、ベーシスポイント、年率換算、NAVと実際の売買成績の違いを確認できます。
要点
トラッキング差はファンドと指数の収益率の差、トラッキングエラーは期間ごとの収益率差の変動性です。毎月一定幅で指数を下回るファンドは、エラーがゼロでも累積成績では指数に負けます。比較する期間や計算基準をそろえ、両方を確認してください。
ETFの追随度は公表されたベンチマークから確認する
対象は通常の指数連動ファンドです。アクティブ運用が指数に一致すべきかを評価する記事ではありません。名前の似た有名指数ではなく、資料に記載された正確なシェアクラスと指数を使います。
ファンドの純資産価額(NAV)ベースのトータルリターンと、それに対応する指数系列を用意します。通貨、開始・終了日、評価時刻、収益分配の扱いを統一してから差を計算します。
分配型ファンドでは、分配金を支払うとNAVが下がることがあります。トータルリターン系列は分配を反映しますが、未調整のNAVチャートだけでは同じ成績を測れません。
[Investor.govの分配金解説](https://www.investor.gov/introduction-investing/general-resources/news-alerts/alerts-bulletins/investor-bulletins/fund-distributions-investor-bulletin)は、この価値の移転を説明しています。
[Vanguardの指数追随の解説](https://www.vanguard.co.uk/professional/vanguard-365/investment-knowledge/etf-knowledge/what-affects-index-tracking)は、収益率差の大きさと変動性を区別しています。
トラッキング差を符号付きのパーセントポイントで求める
ここではトラッキング差(TD)を、同じ期間のファンドのトータルリターンから指数のトータルリターンを引いた値とします。負ならファンドが下回っています。提供元の引き算の方向も確認してください。
1年間に指数が8.00%、ファンドが7.70%上昇したとします。TD = 7.70% − 8.00% = −0.30パーセントポイント、つまり−30bpです。1bpは0.01パーセントポイントです。
それぞれ10,000から始めた架空の投資なら、期末価値は10,800と10,770です。ファンドは通貨単位で30下回ります。個人の税金、売買費用、外部資金の出入りは含めません。
30%の不足ではありません。また、10,770 ÷ 10,800 − 1 ≈ −0.2778%とも別です。後者は指数の期末資産を分母にした比較です。
複数期間では各リターン系列を別々に複利計算し、対応する累積リターンを引きます。月ごとのパーセントポイント差を足しても、一般には累積TDにはなりません。
4か月の一定な差と変動する差を並べてみる
毎月のリターンが正確に0%の架空の指数を考えます。次のファンドの数値は計算を切り分けるための仮定であり、実在ETFの成績や予測ではありません。
Aの差は一度も変わらないため、標本トラッキングエラーはゼロです。それでも横ばいの指数に毎月負けています。変動がないことと、収益率差がないことは別です。
Bの平均的な月次差は同じですが、その平均を上下します。したがってトラッキングエラーは正です。年率換算をしなくても、2つの指標が答える質問は異なります。
- Aの月次リターン:−0.10%、−0.10%、−0.10%、−0.10%。
- Bの月次リターン:−0.30%、+0.10%、−0.30%、+0.10%。
- 両者の月次差の算術平均は−0.10パーセントポイント、つまり−10bpです。
単位を保ちながら標本トラッキングエラーを再現する
対応する各期間のファンド収益率から指数収益率を引いた値をa_tとします。符号を保った差の平均を求め、標本標準偏差を計算します。s = sqrt(sum((a_t − 平均(a))^2) ÷ (n − 1))で、nは1より大きい観測数です。
[NISTのばらつきの解説](https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/eda/section3/eda356.htm)は標本分散の分母を説明しています。本例はn − 1を使いますが、公表値の再現には提供元の定義を確認します。
Bの差をbpで書くと−30、+10、−30、+10です。平均−10bpからの偏差は−20、+20、−20、+20bpになります。
偏差の二乗和は1,600bp²です。3で割って平方根を取るとs ≈ 月次23.0940bp、月次リターンの単位では0.230940%です。
通常の時間の平方根による換算では、年率TE = s × sqrt(12) = 80bp、つまり0.80%です。12は1年の月数であり、この例の観測数4ではありません。
この換算には、分散が適切に安定し、時系列共分散がないという前提があります。差の自己相関や環境変化は解釈を制約します。架空の4観測から実在ファンドの将来は判断できません。
標準偏差では差の符号を残してください。差の絶対値を平均したり、絶対値に変えてから標準偏差を計算したりすると、別の統計量になります。
平均差を成績とせず各経路を複利でつなぐ
Aの4か月累積リターンは(0.999)^4 − 1 ≈ −0.3994004%です。Bは(0.997 × 1.001)^2 − 1 ≈ −0.4001988%です。指数が横ばいなので、これらは4か月のTDでもあります。
平均はどちらも月−10bpですが、複利の結果は少し違います。いずれも正確な−0.40%ではなく、Bの年率トラッキングエラー0.80%とも同じではありません。
始点と終点のリターンだけでTDは求められても、TEは再現できません。同じ終点に至る月次経路は複数あります。年間差1つから変動性を作らず、日付付き観測値を入手してください。
算術平均と幾何平均のガイドでは、成長係数を掛ける計算がリターンの合計や平均と異なる理由を説明しています。
NAVの追随成績と実際の約定価格による成績を分ける
分配なしでNAVが100から110に上がり、指数も10%上昇したとします。この期間のNAVベースのTDはゼロです。
ところが同じ期間に102で買い、109で売った場合、費用前リターンは109 ÷ 102 − 1 ≈ 6.8627%です。買いのプレミアムと売りのディスカウントが、NAVリターンを変えずに投資家の結果を変えます。
これは仮の約定価格です。実際には手数料、売買スプレッド、為替換算、個人の税金でさらに差が出ます。ただし実際の約定価格に含まれるスプレッドを推定費用としてもう一度引かないでください。
[Investor.govのETF解説](https://www.investor.gov/introduction-investing/investing-basics/investment-products/mutual-funds-and-exchange-traded-2)も市場価格とNAVを区別しています。
プレミアムやディスカウントは、ある時点の価格とNAVの比較です。TDは一定期間の収益率を比較します。互いに置き換えられる指標ではありません。
費用を二重計上せず追随のずれを調べる
ファンド費用、売買、現金保有、代表銘柄の抽出、収益や税金の反映時点は指数追随に影響し得ます。ただし、収益率差1つだけでは最大の原因を特定できません。
[Vanguardの追随要因の解説](https://www.vanguard.ca/en/tools-and-resources/etf-fundamentals/management/index-tracking)では、証券貸付収益など差を相殺し得る要因も扱っています。
公表NAVリターンが既にファンド費用を反映していれば、経費率を再び引きません。TDは観測された結果であって別の請求書ではなく、TEも追加の年次手数料ではありません。
配当を税引前で扱うか源泉税の仮定を反映するか、為替ヘッジの有無も合わせてください。税やヘッジ条件の違う指数に勝っても、追随精度が優れている証拠にはなりません。
TDが正になることもありますが、将来の超過成績を保証しません。すべての差が表示経費率と等しいと考えず、ファンドの説明や実装方法を確認します。
ETF資料を再現可能な比較基準で点検する
同じ指数とシェアクラスの目的を持つファンドを比べます。異なる指数との比較は、追随精度だけでなく投資対象の違いも含みます。次の情報を数値に添えてください。
事後TEは観測リターンから、事前TEはリスクモデルから求めます。モデル推定を実測値として示さず、データのない日を架空のゼロリターンで埋めないでください。 [!TRYMARK] TryMark ETF追随チェック 次の資料確認では、ファンドと指数の比較を再現することを目標にします。指数の版、収益率の日付、分配調整、費用処理が変わればTDとTEを再計算してください。 [!WARNING] 小さいトラッキングエラーは小さい投資リスクではありません ファンドと指数が一緒に急落しながら、密接に動くこともあります。TEは最大損失や確率の保証ではありません。投資対象とドローダウンを別に確認してください。
収益はトータルリターンの基準、損失はドローダウンの測定と併せて確認します。特定ETFの推奨ではありません。
- 正確な指数、通貨、シェアクラス、分配の処理方法。
- 開始・終了日、NAVか市場価格か、評価時刻。
- TDの符号と、累積または年率リターンの区別。
- TEの観測頻度、標本期間、分母、年率換算方法。
- 既に反映された費用、欠測値、ファンドによる差の説明。
よくある質問
トラッキングエラーがゼロでもTDは負になりますか?
なります。本例のAは横ばいの指数を毎月0.10パーセントポイント下回ります。一定な差の標本標準偏差はゼロですが、4か月の複利リターンは約−0.3994%です。
トラッキングエラー0.80%は指数に0.80%負ける意味ですか?
違います。指定の観測・年率換算方法に基づく変動性です。予想手数料でも最大の収益率差でもなく、個人の結果を予測しません。
資料にある1年間のリターンだけでTEを計算できますか?
終点の差1つだけではできません。対応するファンドと指数のリターン系列と、計算方法が必要です。期間のリターンでTDは分かっても、経路の変動性は分かりません。
公表TDに経費率を足して費用を計算しますか?
ファンドのリターンに既にその費用が含まれているなら足しません。二重計上になります。ファンドのNAV成績と個人の売買・為替・税金の費用を分けてください。