ディスインフレとデフレの違い:物価上昇の鈍化は値下がりなのか
物価水準とインフレ率を分けて、インフレ、ディスインフレ、デフレを仮定の数値と米国のCPI・PCEで解説します。
このガイドの内容1. 似た言葉でも、価格の動きは異なる
短い要約
インフレは物価水準全体の上昇、ディスインフレはプラスのインフレ率が低下すること、デフレは物価水準全体が広く持続的に下がることです。ある商品の値下がりだけでは、経済全体のデフレとはいえません。
1. 似た言葉でも、価格の動きは異なる
インフレは、財やサービスの一般的な物価水準が一定期間に上昇することです。ディスインフレはインフレ率が低下しても、なおゼロを上回っている状態を指します。価格全体は上がり続けますが、そのペースが鈍くなります。デフレは、物価水準全体が広く持続的に低下することです。セントルイス連銀は[インフレ、ディスインフレ、デフレの違い]({source:stlouisInflationDisinflationDeflation})をこのように整理しています。
インフレ率が4%から1%に下がっただけなら、通常はディスインフレです。ある指数が特定の期間に−1%を記録すれば、その指数のその期間の測定値はマイナスです。ただし、マクロ経済でいうデフレは、単一の短い期間や一つの系列だけでなく、広範で続く価格下落を見て判断します。
「インフレが下がった」と聞いたときは、何が下がったのかを確認してください。インフレ率なのか、指数の水準なのか、それとも特定商品の値段なのかで意味が変わります。
2. 一つの商品の値下がりはデフレではない
商品ごとの価格は同じ方向には動きません。新モデルの発売後に旧型のスマートフォンが安くなる一方で、家賃や医療サービス、食品の価格は上がることがあります。そのスマートフォンの値下がりは相対価格の変化であり、経済全体の物価水準が下がった証拠ではありません。
物価指数は、決められた対象と重みに沿って多くの価格情報を集約します。ある対象範囲の平均的な動きを示すもので、すべての家庭が買うすべての商品を同じように表すわけではありません。セントルイス連銀は[個別価格、物価水準、インフレ率の違い]({source:stlouisPriceLevelInflationRate})を説明しています。
そのため、指数の一部の項目が下がっていても、総合指数が上昇し続けることがあります。逆に、いくつかの項目が上がる中で総合指数が下がる場合もあります。デフレかどうかを見る際は、一つの商品や構成項目ではなく、広い指数を複数の期間にわたって確認しましょう。
3. 指数水準とインフレ率を分ける
指数水準は、選ばれた基準時点に対する相対的な値です。ある期間の変化率は、期首と期末の指数を比べて計算します。
変化率 =(期末の指数 ÷ 期首の指数 − 1)× 100
指数が100から104になれば、上昇率は4%です。104は指数の水準であり、インフレ率104%を意味しません。その次の上昇率が低くてもプラスであれば、指数の水準は上がり続けています。セントルイス連銀の[物価水準とインフレ率の解説]({source:stlouisPriceLevelInflationRate})も、この二つを区別しています。
したがって、インフレ率の低下だけで物価水準が以前の値に戻るわけではありません。104から100に戻すには、104を基準に約3.85%下がる必要があります。上昇ペースが遅くなることと、水準そのものが下落することは別の動きです。
CPIの指数値100は基準期間を100とした参照値で、通貨での価格を表すものではありません。系列ごとに基準期間や対象範囲が異なるため、異なる系列の指数水準をそのまま比較することもできません。BLSの[CPIの概念解説]({source:blsCpiConcepts})も、指数値は基準期間に対する相対値であり、系列間の単純比較には使えないと説明しています。

4. 100から始まる仮定の指数を追う
次の数字は計算方法を示すための仮定の例です。米国の現在の統計値や予測ではありません。
- 指数が100から104へ上昇:(104 ÷ 100 − 1) × 100 = 4%。
- 次に104から105.04へ上昇:(105.04 ÷ 104 − 1) × 100 = 1%。上昇率は4%から1%へ鈍化しましたが、プラスなのでディスインフレです。
- 続いて105.04から103.9896へ低下:(103.9896 ÷ 105.04 − 1) × 100 = その期間に−1%。
この2回の上昇を合わせると、100からの上昇率は単純な5%ではなく5.04%です。2回目の1%は100ではなく104にかかるためです。
1%下落した後でも、指数水準103.9896は最初の100を上回っています。一期間のマイナス変化は、それまでの上昇を帳消しにしません。この例が示すのはその期間の−1%だけで、持続的なデフレを示すには不十分です。広範な価格下落が続く必要があります。
5. 前年比の比較窓が率を変える
前年比は、現在の指数を12か月前の指数と比べます。比較対象となる過去の月が毎月入れ替わるため、現在の指数が前月より上昇していても、前年比の上昇率は低くなることがあります。
仮定の例では、5月の現在の指数が104、前年5月の指数が100です。前年比は (104 ÷ 100 − 1) × 100 = 4%。6月には現在の指数が104から105へ上昇しますが、前年6月の指数は102です。よって前年比は (105 ÷ 102 − 1) × 100 ≈ 2.94%です。
この例では、現在の指数は104から105へ上がる一方、前年比率は4%から約2.94%へ下がります。現在の物価水準が低下したわけではなく、1年前の比較対象も変わったためです。統計を見るときは、月次か前年比か、どの期間を比べているかを確認してください。
同じ仮定例で、104から105への1か月の変化は (105 ÷ 104 − 1) × 100 ≈ 0.96% です。これは前年比の約2.94%とは別の比較です。
6. 米国のCPI、PCE、2%目標
米労働統計局(BLS)はCPIを、都市部の消費者が購入する代表的な財・サービスのバスケットについて、価格の平均変化を時間の経過とともに測る指標と説明しています。定義は[BLSのCPI FAQ]({source:blsCpiFaq})と[BLSのCPI概念・方法の説明]({source:blsCpiConcepts})にあります。CPIは対象人口とバスケットを定めた指標で、各家庭の実際の支出額そのものではありません。
米経済分析局(BEA)が公表するPCE価格指数は、米国居住者が購入した、または居住者のために購入された財・サービスの価格を追います。対象範囲や作成方法はCPIと異なるため、両者の範囲が同一だとはいえません。[BEAのPCE価格指数]({source:beaPcePriceIndex})とCPI・PCE・GDPデフレーターの比較を参照してください。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の長期的な2%インフレ目標は、PCE価格指数の前年比変化率で測られます。これは米国の政策目標であり、ディスインフレの定義でも、デフレが始まる普遍的な境界値でもありません。[連邦準備制度の長期目標に関する声明]({source:fedTwoPercentGoal})に測定方法が記されています。
7. 持続的なデフレが固定額の債務に与える影響
名目債務は、契約に書かれた通貨額で返済する義務です。物価や所得が下がっても名目の返済額が変わらなければ、その返済が所得に占める割合が高まることがあります。価格と所得が異なるペースで調整されると、債務の実質的な負担が増える可能性があります。
これは起こり得る仕組みであって、すべての借り手や経済で必ず起こる結果ではありません。債務の満期、所得の動き、金利、政策、バランスシートなどが影響します。一つの商品の値下がりだけから、債務負担全体が変化したとは結論できません。
したがって、デフレが必ず悪循環を引き起こすと言い切るのは正確ではありません。より限定的には、広範で持続するデフレのもとで所得と価格の調整が不均一なら、固定額の名目債務の実質負担が増えることがあります。[連邦準備制度の解説]({source:fedDeflationDebtBurden})も、デフレによって債務返済が難しくなり得る点を扱っています。
8. 「物価が下がった」という説明を確かめる
デフレかどうかを判断する前に、使った指数、対象とする財・サービス、比較期間、指数自体の変化、下落が広範で持続しているかを記録しましょう。月次と前年比を区別し、インフレ率の低下を物価水準の低下と混同しないことが大切です。
インフレが運用成果の購買力にどう影響するかは、名目リターンと実質リターンで扱っています。この記事ではリアルタイムの数値や予測を使わず、投資助言も行いません。
GDP統計で金額と生産量を分けて見る方法は、名目GDPと実質GDPで説明しています。
よくある質問
Q1インフレ率が4%から1%に下がると、商品は安くなりますか?
必ずしもそうではありません。率がプラスなら、測定対象の平均的な物価水準は上昇を続けています。価格が下がったというには、対象期間の指数変化がマイナスである必要があります。
Q2一つの商品が値下がりしたらデフレですか?
いいえ。その商品固有の事情や値引きによる相対価格の変化かもしれません。デフレは一つの商品ではなく、広い範囲の価格が持続的に下がることを指します。
Q3連邦準備制度の2%目標がディスインフレを定義しますか?
いいえ。2%はPCEの前年比で測る米国の政策目標です。ディスインフレとは、政策目標の水準にかかわらず、インフレ率が低下してもプラスにとどまることです。
出典
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問題 01
仮定の指数が100から104へ、続いて105.04へ上がりました。2回目の変化をどう説明できますか?
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