AT1・CoCo債とは?トリガー、元本削減、株式転換を解説
AT1・CoCoが銀行の損失を吸収する仕組み、元本削減と株式転換の違い、契約条件と各国の破綻処理法の重要性を解説します。
このガイドの内容AT1とCoCo債の意味
短い要約
その他Tier 1(Additional Tier 1、AT1)資本性金融商品は、銀行が存続不能点に達する前、またはその時点で損失を吸収するよう設計された証券です。契約上のトリガーが発生すると、元本が減額されたり、株式に転換されたりすることがあります。条件付き転換社債(CoCo)と呼ばれる商品もあります。発動条件、損失額、弁済順位、法的効果は、個別商品の条件と発行体に適用される法律によって異なります。
AT1とCoCo債の意味
AT1は規制上の資本区分であり、統一された契約様式ではありません。バーゼル基準に適合するAT1は永久性を持ち、預金者、一般債権者、銀行の劣後債務よりも劣後します。また、発行体はクーポンなどの分配を全面的な裁量で取り消せる必要があります。条件に基づく取り消しは、必ずしも支払不履行を意味しません。バーゼルの資本定義枠組みは、これらの適格要件と損失吸収機能を説明しています。
「CoCo」は、条件付きの損失吸収機能を備えた証券を指す市場用語で、多くは株式転換または元本削減によって損失を吸収します。銀行のAT1債の多くはCoCoですが、両者は同義ではありません。CoCoには別の資本階層の商品もあり、AT1のトリガーも発行ごとに異なります。株式転換を伴わず元本だけが削減される場合もあります。名称だけで結果を判断せず、目論見書と最終条件を確認しましょう。
AT1は、銀行が営業を続ける間の資本であると同時に、深刻な危機や破綻処理時の損失吸収にも使われます。そのため、正式な倒産手続きが始まる前にトリガーが作動することがあります。満期日に元本返済を受ける通常の社債と異なり、契約上のトリガー、監督当局の権限、各国の破綻処理法も投資結果に影響します。
資本比率トリガーと存続不能点
一部のAT1契約は、普通株等Tier 1(CET1)比率に基づく機械的トリガーを定めています。バーゼル基準では、負債として会計処理されるAT1に、事前に定めたCET1比率5.125%以上で元本損失を吸収する仕組みが必要です。契約でより高い水準を設けることもできます。EU資本要件規則第54条も対象となるEU商品について5.125%または契約上のより高い水準を規定します。すべての国のAT1に共通する閾値ではありません。
CET1比率は株価や手元資金残高ではなく、規制上の自己資本をリスク加重資産と比べる指標です。どの銀行・グループを、どの時点で、どの方法により計算するかは規則と契約によって決まります。公表財務諸表に基づく推計だけで契約上の事由が発生したと判断できるわけではありません。
別の存続不能点(PONV)トリガーは、監督当局の判断に基づくことがあります。バーゼル枠組みでは、銀行の存続不能を防ぐために減額または転換が必要だと当局が判断した時点と、それがなければ存続不能となる公的資本注入等を決定した時点のうち、早い方を基準とします。国内法が同様の権限を直接定める場合もあります。PONVに世界共通の数値基準はなく、同じ契約にCET1とPONVの両方が規定されることもあります。
元本削減と株式転換の違い
元本削減は、保有者の法的な元本請求権を減らします。契約により一部または全部、恒久または限定条件下で一時的に戻り得る削減があります。将来のクーポンやコール・償還時の金額も減ることがあります。バーゼルのPONV要件では、そのトリガーで永久削減または普通株への転換が可能でなければなりません。減額された元本が後で必ず復元されるとは限りません。
株式転換では、AT1債権の全部または一部を株式と交換します。転換価格、比率、上限などは契約に定められます。転換後はクーポンを受け取る債権者ではなく株主となり、価値は株価、希薄化、株主権利、銀行の状況によって変わります。受け取る株式の価値が放棄した元本を大きく下回ることもあります。EU規則は対象商品の転換条件や清算請求権、償還、分配に対する削減の効果を定めていますが、他の法域では異なる場合があります。

株式が残っていてもAT1が損失を吸収する理由
AT1は銀行が営業を続ける状態で機能する資本です。そのため、普通株主が株式を保有していても、裁判所の倒産手続きより前に比率またはPONVトリガーが作動する場合があります。これが許されるか、株主資本を先に減らす必要があるかは、契約と各国の規則によります。
Credit Suisseの事例が示すこと、示さないこと
2023年3月、FINMAはCredit SuisseのAT1をすべて減額するよう指示し、額面で約165億スイスフランが対象となりました。FINMAは、発行目論見書が「Viability Event」、特に異例の政府支援時に全額減額できるとし、連邦保証付きの緊急流動性支援がその契約条件を満たしたと説明しました。スイス連邦評議会の緊急条例も根拠に挙げました。これは当時の措置についてのFINMAの説明であり、他の発行体の解釈にそのまま使える規則ではありません。
2025年10月1日、スイス連邦行政裁判所は一つの手続きで部分判決を出し、FINMA命令に法的根拠がなかったとして取り消しました。元本を戻す請求については判断していません。FINMAは連邦最高裁への上訴を表明し、同年10月、行政裁判所は他の事件を主要事件の判断まで停止すると発表しました。裁判所の公式通知は部分判決が確定しておらず、最終結果や返金も決まっていないことを示しています。手続き状況を引用する際はスイス当局の最新情報を確認してください。
この事例は、目論見書の文言、契約トリガーが成立したか、どの法定権限が適用されたか、命令の法的根拠が十分だったかを分けて考える必要を示します。世界共通の順位や、政府の流動性支援があればすべてのAT1トリガーが成立することを示すものではありません。
裁判所の部分判決に関する告知には、この判断と未決の原状回復申立てが記されています。
仮定上の損失例と残るリスク
仕組みを説明する仮定として、投資家が額面1万ドルのAT1を保有し、定められたトリガーで元本全額が恒久的に減額されるとします。契約上のCET1指標が閾値を下回り、必要な当局措置も行われれば、この仮定では1万ドルの元本請求権を失い、将来の分配も止まる可能性があります。これは銀行への予測でも実在証券の説明でもありません。別の契約は部分減額または転換を定めるかもしれません。
転換の場合、契約で定めた種類と数の株式を受け取るのであり、元本が戻る保証はありません。トリガー前でも資本、流動性、収益、政治・法的リスクの再評価で価格が大きく動くことがあります。クーポン取消し、永久債や期限延長、危機時の換金困難もあります。測定時点とグループ範囲、PONVの当局裁量、転換価格、金利、市場流動性、国境を越えた執行もリスクです。高いクーポンがこれらをなくすわけではありません。
AT1の最終条件を読む
まず発行体が事業銀行か持株会社か、通貨、準拠法、法的形態を特定します。CET1閾値と計算範囲、PONVまたは「Viability Event」の定義を探し、誰が判断するのか、単体銀行かグループか、政府支援が含まれるかを確認します。
次にトリガーの結果を確認します。元本は全額か一部か、恒久的か、限定条件で戻り得るか。転換する場合はどの株式か、価格や比率、上限、希薄化はどうなるか。クーポン取消しの裁量、コールや期限延長、清算・破綻処理での順位も確認します。販売用の要約だけでなく、目論見書全体を読みます。
発行体の最新資本開示と現地規則に条件を照らしてください。関連情報は担保付・無担保債の順位、債券コベナンツと契約書、社債格付けの変化を参照してください。本稿は一般的な仕組みの解説であり、特定証券の法的判断や投資推奨ではありません。
AT1の書類を読むときの実務的な原則
目論見書、発行体に適用される法律、破綻処理の枠組みを一組の資料として読みましょう。トリガーや支払順位の見出しだけでは、損失吸収を発動する事由、投資家の請求権に起きる変化、銀行が破綻処理または清算に入った場合の順位という三つの問いには答えられません。関連条項を合わせて確認し、法的状況の説明がいつ時点のものか記録してください。
よくある質問
Q1銀行が債務不履行でなくてもAT1クーポンは取り消されますか?
はい。バーゼル適格AT1では発行体に分配を取り消す広い裁量が必要です。効果は契約と現地法により、取消しが必ず支払不履行になるとは限りません。
Q2すべてのCoCo債は株式に転換されますか?
いいえ。株式に転換するものも、元本を減額するものもあります。同じ商品でもトリガーごとに結果が異なる場合があるため、目論見書と最終条件を確認します。
Q3普通株主がすべて失った後にだけAT1が減額されますか?
世界共通の簡単な規則はありません。銀行が営業中に作動するトリガーもあり、破綻処理と倒産の法律はそれぞれ独自の順序を定めます。
出典
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問題 01
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